水分補給はしっかりと!水分は不足しがち?大切なお水について

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「水」は栄養素の分類は入っていませんが、生きていくためには欠かすことのできない大切なものです。
しっかりと水分を摂っているつもりでも、よく体を動かす人やお酒を飲む人などは、体から水分が失われやすくなってしまうことはご存知でしょうか。
1日に必要な水分量と、体内での水の働きを知り、体内で不足しないようしっかりと水分補給をする習慣を身につけていきましょう。

目次

  1. 水が持つパワーとは
    • 水の働き
    • 体内に含まれる水分量には違いがある
  2. 体内の水分量は足りていますか?
    • 水分を20%失うと生命の危機!
    • 体内の水分が不足する原因
    • かくれ脱水に注意!
  3. 1日に必要な水分量
    • 水分補給は健康の源
    • 意識して水分を補給しましょう
    • 観察してみよう、水分と尿の関係
  4. 正しい水分補給の仕方
    • 水はこまめに・早めに飲む
    • 水分補給は自分にあったものを選ぼう
  5. まとめ

水が持つパワーとは

水の働き

人間の体の大半は、酸素・炭素・水素・窒素の元素で占められています。
その他の元素として、カルシウムやマグネシウムなどが体の土台を作り、ナトリウムやカリウム、塩素などが体内でのいろいろな働きに関わっています。
しかし、体内に最も多く含まれている成分は、水です。※1、2
人間が生きていくうえで重要な栄養素とは何でしょうか。
一般的には、たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素といわれますが、実は生きていくためには欠かすことのできない大切な成分です。

水は体内では至る所に分布し、体液と呼ばれています。
溶解力に優れた水は、酸素や二酸化炭素などを溶かし込むことができ、表面張力、比熱、気化熱、熱伝導率が大きいという性質があります。※1、2
そのため、体内の水は蒸発しにくく、凍りにくく、よく熱を伝えるという特徴をもっています。
これらの特徴により、水は体内で次のような働きをしています。※1、2

【酸素や栄養素を溶かして運搬する】※1、2
栄養素は全て水に溶けた状態で消化吸収される。

【酵素反応の場所を作り出す】※1、2
水に溶けた栄養素に酵素が働くと、栄養素が水と反応する加水分解が起こる。
例:デンプンが麦芽糖やブドウ糖へと分解される

【体温の調節を行う】※1、2
体を動かすことで筋肉グリコーゲンが分解され、エネルギーと熱が発生する。
この熱は体温となり、余分な熱は水が呼気や汗となって、気化熱として熱を奪い、体温を一定に保つ。

【体液の浸透率を維持する】※1、2
栄養素は水に溶け体内に入り、いろいろな働きを行う。
不要となった栄養素も水に溶け、排泄される。

その他にも、体表に存在している水には体が乾燥してしまうのを防ぐといった働きもあります。
体を動かすためのエネルギー源とは異なるものの、酸素と同じように、水は生命活動のために必ず必要とされます。
体内で水が不足しないためにも、まずは自分に含まれている水分量を知りましょう。※1、2

体内に含まれる水分量には違いがある

水は体内に多く含まれていますが、年齢や性別によっても差があります。
それでは、年齢と性別ごとの水分量をみてみましょう。

【人体の水分量(体重との比較)】※1

  • 乳児      約80%
  • 成人男性   約65%
  • 成人女性   約55%
  • 高齢者    約50%

水分の含有割合は、新陳代謝が活発な乳幼児がもっとも多くなります。
しかし、暑い季節や汗の蒸発が多い場合には水分は失われやすく、もともと水を蓄えておく体の大きさが小さい子供の体内は、容易に脱水を招いてしまいます。
体内の水分は失われてしまうと、時には命のかかわる危険な状態となることもあるため、炎天下などでは早めにしっかりと水分補給を行うようにしましょう。※1、2
子供は遊びに夢中になってしまうと、なかなか水分を飲んでくれなかったり、甘いジュース以外は嫌がってしまったりします。
お気に入りのコップや水筒を利用するなどして、子供にもこまめな水分補給を意識しましょう。※1、2

また、比較的安静にしていることの多い大人でも、水分は日々失われていることをご存知でしょうか。
成人1日1人当たりでは排泄物として約1,500mlが体内から出されています。※1、2、3
また、その他にも汗として700ml呼気では300mlの水分が体内から排出されてしまいます。
もちろん、実際の水分排出量には個人差がありますが、運動を日常的に行っていないという方でも、1日に約2,500mlは体内の水分を失っているということになります。
運動を習慣にされる方や、職場などでの温熱環境で発汗量の多い人では、それ以上の水分を毎日失っていることになります。※1、2、3
体内の水分は不足していないか、自分の体としっかりと向き合ってみましょう。

※1 中村丁次監修 2020年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版 
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/
※2 牧野直子監修 2016年9月発行 世界一やさしい!栄養素図鑑 新星出版社
http://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-09325-6/
※3 厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動 / 2020年10月30日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html

体内の水分量は足りていますか?

水分を20%失うと生命の危機!

前述の通り、水は体内で欠かすことのできない成分です。
では、体内の水分がどの程度失われると、体にとって良くないことが起こるのでしょうか。

たとえば、ショッピングで長時間歩いている時や、スポーツを行っていると喉が渇くことがありませんか。
この喉の渇きは体内で水分が不足したことの現れで、それを補うように働きかける体からのサインです。
喉の渇きは通常、体重の約1%の水分が失われると自覚するようになるといわれています。※1
体内の水分が約5%失われると、眩暈や失神、筋肉の硬直といった軽度のものから、頭痛や吐き気、倦怠感などといった異変が体にあらわれてきます。※1、3、4、5
体内の水分が約10%失われると急性の循環不全(血液量の減少)が起こり、意識障害や痙攣、頻脈、顔面蒼白、冷や汗などがみられるようになり、危険な状態になっていきます
そのまま体内の20%の水分を失ってしまうと、死にもつながるため注意が必要です。※1、2、3

水分不足による体調不良が見られた時には、なるべく涼しい場所へ避難し、首や脇の下、太腿の付け根といった場所を冷やし、失ってしまった水分の補給も忘れずに行うようにしましょう。
しかし、意識がない場合に無理に水を飲ませると思わぬ事態となることがあります。
この場合はすぐに救急車を呼ぶなどして、医療機関へ行きましょう。※3

体内の水分が不足する原因

体内の水分は、発汗が多いと排泄量(尿)は減少しますが、水を大量に摂取した場合は排泄量(尿)が増えます。
このように、人間の体内では、常に一定量の水分が保たれるように調整されています。
しかし、水分の摂取不足や体液の過剰喪失が起こってしまうと、一定に保たれていたはずの水分は減少し、水分不足となってしまいます。※1、4
体液の過剰喪失というとピンとこないかもしれませんが、発汗だけではなく下痢やおう吐、出血なども体内の水分不足の原因となります。
特に下痢は、食べ物が合わない場合などでも起こりますが、暴飲暴食やイライラなどでも起こります。
水分が多い便が排出されてしまう下痢は、ただの水だけではなく大切な栄養分も含まれているため、長期間続いてしまうと体力も消耗してしまいます。※1、4
このような下痢やおう吐、多量の発汗などにより起こる脱水は、健康だった人にも突然起こることがあります。
特に小児は、体重あたりの水分割合は多いのですが、体の大きさからみると実際の体内水分量は多くありません。
そのため、失われる水分量が少なく見えても、体内の水分は不足しやすくなります。
体内で水分が不足しないよう、日頃から水分補給に努めるとともに、健康管理をしっかりと行いましょう。※1、4

かくれ脱水に注意!

年齢を重ねると、体内の水分量が減少してしまい潜在的な体液不足に陥りやすくなることもあります。
さらに、喉の渇きを感じる力の鈍化や食事摂取量の不足などにより、高齢者は体内の水分が不足しやすい状況にあります。※1、4、6
慢性的な脱水では、ふらつきから転倒することもあります
かくれ脱水を早期に発見し、毎日を健康に過ごせるようにしていきましょう。※6
次のチェック表で、当てはまるものが多い人は、より水分補給に気をつけた生活を送るようにしましょう。

 

【かくれ脱水チェック】※6

  • 皮膚が乾燥している
  • 便秘薬を服用している
  • 利尿薬を服用している
  • 冷たい飲食物が好き
  • BMIが25を超えている

 

※1 中村丁次監修 2017年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版 
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/
※2 牧野直子監修 2017年9月発行 世界一やさしい!栄養素図鑑 新星出版社
http://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-09325-6/
※3 厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動 / 2020年10月30日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
※4 日本静脈経腸栄養学会雑誌 32(3) :1126-1130:2017 総論 栄養管理における体液状態の評価 / 2020年10月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/32/3/32_1126/_pdf
※5 日本救急医学会 医学用語 解説集 ショック
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0823.html
※6 日本老年医学会雑誌 52巻 4 号(2015:10) 高齢者用かくれ脱水発見シートの開発-介護老人福祉施設の通所者を対象とした検討 / 2020年10月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/52/4/52_359/_pdf

1日に必要な水分量

水分補給は健康の源

体に欠かすことのできない水は、1日どのくらいの量を摂取するとよいかご存知でしょうか。
水は人間の体内でも作られますが、この量はそれほど多くはなく成人で1日あたり約300ml程度です
体内では、摂取した糖質や脂質、たんぱく質といった食べ物がエネルギーに変わる時に水が作られます。※1、3
では、糖質がエネルギーに変わる仕組みをみてみましょう。
摂取されたブドウ糖は酵素によりピルビン酸になります。
この過程でエネルギーが発生し、激しい運動などで酸素不足の時に利用されています
生命活動の源となるエネルギーは、ピルビン酸が酵素によってさらに変化し、呼吸により取り入れられた酸素と反応することでつくられますが、この時に一緒に水が作られているのです。

また毎日の食事でも水分は補給することができますが、体に入る食べ物での水分は約1,000mlです。
私たちの体からは1日約2,500mlの水分が排出されるので、計算では最低でも飲み水で1,200mlを摂取する必要があります。※1、3

意識して水分を補給しましょう

水分の補給というと、飲み物であれば何でもいいと思っていませんか。
同じ水分ではありますが、コーヒーやお茶に含まれるカフェインやアルコールには、利尿作用があるため、通常よりも尿の量が増えてしまいますので、水分補給にはあまり適しません
カフェインを含んだ飲み物やアルコールは適量にとどめるようにし、水分補給という目的に合った飲料を選ぶようにしましょう。※1、3

観察してみよう、水分と尿の関係

1日1,200mの水分を摂っていれば、体内の水分は決して不足しないという事ではありません。
激しい運動をしている人は、体から排出されている水分量に見合った量の水分を補給していく必要がありますし、それ以外でも入浴中や就寝中はたくさん汗をかきます。※1、3
そこで体内の水分量の目安となるのが尿の濃さです。
体内での水分摂取量が不足すると尿が濃縮されることはご存知でしょうか。
尿の色が薄ければいつも通りの水分補給で大丈夫なのですが、今日は色が濃いと思った時には水分を補給する必要があります。
尿の色が濃ければ濃いほど体内の水分は不足しているということです。
毎日しっかりと尿の色を確認する習慣をつけ、体内の水分が不足していないか確認しましょう。※1、3、7

※1 中村丁次監修 2017年3月発行 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版 
http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415327433/
※3 厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動 / 2020年10月30日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html#03
※7 厚生労働省 あんぜんプロジェクト / 2020年10月30日閲覧
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2015/sakuhin5/n006.html

正しい水分補給の仕方

水はこまめに・早めに飲む

喉の渇きを感じているということは、すでに体内で水分が不足してしまっているサインです。
では、体内で水分が不足しないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
水分が不足しやすい運動などで体を動かす前後には水分補給を行うことも大切なのですが、運動中は特にこまめに水分を補給するように心がけましょう。※3

また、ビールなどを飲酒する時には、ビール1本につき約1.1本分の水分(飲んだビールより10%多い水分)が排出されてしまうため、水を同時に摂取し、水分を補給するとよいでしょう。※3
また、日常生活では喉の渇きを感じる前に水分を摂取する習慣をつけることが大切です。
就寝前後や入浴の前後でも水分の補給を行い、その他にもレイレの後には水分を摂取するといったように、何か行動を起こした際には水分を口にするようにしましょう。
いちいち何かをするたびに水分の摂るのは面倒なので、1度にまとめて飲んでしまおうと思う方もいるかもしれませんが、これは体に負担をかけてしまうためよくありません。※3、8
一度に大量の水分を摂取すると、体内のバランスが崩れてしまいます
つまり、水分はこまめに摂ることが大切なのです。
また、水分補給の水分は糖分や塩分の濃度が高いと吸収までに時間がかかってしまうだけではなく、糖分や塩分の過剰摂取にも注意が必要です。※3、8

水分補給は自分にあったものを選ぼう

発汗は、水分だけが失われているわけではありません。
実は、汗の中にはビタミンやミネラルといった栄養素も含まれているため、大量に汗をかくような運動中では水分と合わせてこのような栄養素も補ってあげることも、体のバランスを保つ上で大切です。
近年では、水分補給として利用される飲料が、とても増えてきました。
いわゆるスポーツドリンクなどですが、これらの中には運動時に限らず、日常生活での水分補給を目的とした飲料も多く販売されています。※9
水分補給として販売されている商品は、体内での吸収速度を速める目的もあり糖濃度や電解質濃度により浸透圧が調整されているものが多くあります。
こういったスポーツドリンクの中には、エネルギーの補給もできるものや、反対にカロリーオフやノンカロリーといった低カロリー表示のものがあります。
スポーツドリンクを水分補給として選ぶ時には、パッケージのキャッチコピーに惑わされず、しっかりと栄養成分を確認し、目的にあったものを選択するようにしましょう。※9

※3 厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動 / 2020年10月30日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html#03
※8 人間と生活環境 (J.IIumall and Living Environment ),2 (1),75/81,1995 運動による発汗後の水分補給の実態と飲食指導 / 2020年10月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhesj/2/1/2_KJ00007029740/_pdf/-char/ja
※9 人間総合科学会誌 1巻1号 2005年 市販スポーツドリンクの最近の動向 / 2020年10月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshas/1/1/1_1_56/_pdf/-char/ja

まとめ

運動などを行い、汗をかくと水分補給を心がけるようになりますが、真夏以外では汗をかいていないため、水分が不足しているという自覚もなくなってしまいます。
しかし、運動を行っていない時でも体内の水分は確実に消費されています。
こまめな水分補給を習慣にし、元気な体を維持していきましょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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