女王バチだけが口にできる特別食!ローヤルゼリーの元気パワーとは?

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ローヤルゼリーという言葉を耳にしたことがある方は、多いのではないでしょうか。
しかし「では、ローヤルゼリーとは何か」と問われると、首を傾げてしまいませんか?
中には「ローヤルゼリーは高級なハチミツ」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、ローヤルゼリーはハチミツとは全く別の特別なもので、驚くほどに強い元気パワーが備わっています。
それでは、ローヤルゼリーの脅威のパワーに迫ってみましょう。

目次

  1. ローヤルゼリーってなに?
    • ハチミツとローヤルゼリー
    • ミツバチはいつの時代からいた?
  2. ローヤルゼリーを食べる量で生き方が変わる?
    • ローヤルゼリーのヒミツ、ミツバチ一家の役割分担
    • ミツバチのからだ
  3. ローヤルゼリーはパーフェクトフード
    • ローヤルゼリーの成分
    • ローヤルゼリーの生産
  4. ローヤルゼリーを上手に摂るには
    • ローヤルゼリーの形状
    • 心配なことは医師に確認しましょう
  5. まとめ

ローヤルゼリーってなに?

ハチミツとローヤルゼリー

ミツバチから採れるハチミツとローヤルゼリーにはどのような違いがあるのかご存知でしょうか。

・ハチミツ
西洋ミツバチのハチミツは、ストレートな甘みが強く花の時期ごとに量産されます。
巣から3~4㎞を行動範囲とし、蜜が採れる場所を選ぶとそこへまっしぐらに集団飛来して大量の蜜を集めます。
そのため桜の季節では桜の蜜、ニセアカシアの季節にはニセアカシアの蜜といったように均一の味わいのハチミツとなります。
一方、日本ミツバチのハチミツは甘味以外にも酸味や複雑な香りもあり、古酒のような味わいといわれています。
西洋ミツバチとは異なり、日本ミツバチは行動範囲が狭く、地域ごとの野生植物や栽培植物がたくさんあるため、峠を一つ越えるだけでもハチミツの味が変わるという面白さがあります。

ハチミツが作られる工程は、西洋ミツバチ・日本ミツバチともにほぼ同じで、外勤の働きバチが集めてきた花蜜を貯蔵係の働きバチに口移しし、巣房へと蓄えていきます。
花蜜には80%の水分と20%のショ糖が含まれているのですが、貯蔵係は何度も花蜜を口から出し入れを繰り返して蜜の中の水分を蒸発させ、濃縮します。
この時に唾液中の酵素により花蜜のショ糖はグルコースへと変えられ、さらに有機酸も生成されて保存性と貯蓄性の高いハチミツが作られます。※1、2

・ローヤルゼリー
ローヤルゼリーは、働きバチが花粉を一旦食べて吸収した後に分泌されるもので、王台※1に注がれた乳白色の乳状物です。
この物質は王乳とも呼ばれるピリッとしたすっぱい物質で、女王バチのための食べ物となります。
女王バチ用の完全栄養食品※2とされているローヤルゼリーは、働きバチの体内でハチミツにたんぱく質や脂肪酸を加えながら作られています。
また、働きバチの中でもローヤルゼリーを作ることができるのは、たんぱく質や脂肪酸を分泌する器官が発達している生後10日以内の若い働きバチだけです。※1、2

※1 王台:ミツバチの巣の中に作られる、女王バチを育てるための小部屋

※2 女王バチ用の完全栄養食品 女王バチしか食べることが許されず、なおかつ女王バチにとって唯一の食品であり、生涯に渡る産卵という役割を支える十分な栄養を持つ食品

ところで、アメリカやヨーロッパのいくつかの国ではミツバチの数は減少傾向にあります。
日本でも農業形態の変化などにより、ミツバチが利用できる蜜原植物の数と種類が減少し、現在ではミツバチの増殖は十分には行えない状況にあります。※3、4

 

ミツバチはいつの時代からいた?

ミツバチは古代より、ハチミツを採取するために人類に飼育されてきた歴史があります。
スペイン東部のレヴァント地方のアラニアには、人類が野生のミツバチからハチミツを採取している様子が描かれた、1万年以上昔の壁画が残っています。
また、世界史上初の養蜂国はエジプトであり、紀元前3500年頃に造られたピラミッドからは、ミツバチとアシがデザインされたヒエログリフが発見されています。
エジプトでの養蜂技術を物語る最古の証拠は紀元前2600年頃のものとされ、ヒエログリフには「煙を吹きかける。ハチミツを満たす。圧搾する。封印する。」と書かれています。※3
さらに、旧約聖書には「乳と蜜の流れる地」という記述があり、この蜜とはハチミツのことを指していると考えられています。

※1 J-STAGE ローヤルゼリーとハチミツ / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/27/5/27_5_291/_pdf/-char/ja
※4 J-STAGE 世界におけるミツバチの現状と減少要因 / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/48/8/48_8_577/_pdf/-char/ja
※2 誰でも飼える日本ミツバチ 現代式縦型巣箱でらくらく採密 藤原誠太著 2010年6月発行 農山漁村文化協会
※3 ミツバチの文化史 渡辺孝著 1994年5月発行 筑摩書房

ローヤルゼリーを食べる量で生き方が変わる?

ローヤルゼリーのヒミツ、ミツバチ一家の役割分担

ミツバチは1つの群れでは1匹の女王バチを中心に、働きバチと雄バチが活動を行っています。

・女王バチ
一つの巣に一匹だけ君臨し、主な役割は産卵です。
最盛期には1日に1,000個以上もの受精卵を産みます。
女王バチは幼虫の頃から、ローヤルゼリーだけを食べて一生を終えます
一つの巣の中に複数の女王蜂の幼虫が存在しますが、一番たくさんローヤルゼリーを食べ、最初に羽化した者だけが、女王バチとして君臨できます。

・雄バチ
女王バチが大きめの巣房に無精卵を産みつけ、働きバチが世話をすることで雄バチが育ちます。
繁殖時期などに交尾のためだけに数百から時には1,000匹以上の雄バチが出現し、交尾が成功すると役目を終え即死します。
また交尾ができなかった雄バチは、花蜜が減る秋になると、一家から追放されてしまいます。

・働きバチ
働きバチはじつにさまざまな仕事をこなします
羽化後は羽も短く飛行も出来ないため巣の掃除などを主に行い、花粉を食べてミルクが分泌できるようになると幼虫の世話や、女王バチのためにローヤルゼリーを作ります。
羽化後約10日を過ぎると、蜂ろうの分泌が盛んになるため、巣を作るようになります。
次に、外勤バチが集めてきたハチミツを受け取り貯蔵する役割となり、蜜を盗みに来たハチや外敵を巣門で見張って撃退をする門番となります。
そして羽化からおよそ2週間を過ぎると、外勤バチとして蜜や花粉を集めるために外へ出ます。
外勤バチは体重の約半分の重さの花蜜を1度に持ち帰り、これを日に20~30回も繰り返しています。
また蜜源を発見した時には巣に戻ると、お尻を振る8の字ダンスで蜜源の方向や距離、蜜量などを伝えます。※2、4、5

 

ミツバチのからだ

一生の間にいろいろな仕事をこなすミツバチですが、その体はどのような作りになっているのでしょうか。

・目
コントラストの強い色や形の違いを認識します。
水面がキラキラと反射する場所では、はっきりと見える橋の上を飛び、川を渡ることもあります。

・羽
上羽2枚、下羽2枚の合計4枚です。
生まれたてはまだ羽が小さいのですが、成長とともに羽も大きくなります。

・触覚(ひげ)
ヒトの鼻の穴を裏返したような構造で、主に空中で発揮性のある成分を探します。
この触覚で目的の匂いをキャッチすると、さらに匂いの濃い出所を探しながら蜜源に辿り着きます。

・前足
ミツバチの前足には味がわかるセンサーがついています。
幅を計ることもできるため、女王バチは前足で巣房の径の幅を計り、無精卵と有精卵を産み分けます。
また、働きバチは自分の体を定規のように使い、巣房をきれいな6角形にしています

・後ろ足の1本の毛
花粉がついて、ここから花粉団子を作っていきます。
花粉団子は花粉を蜜で練ったもので、若いハチがローヤルゼリーを作り出すために食べます

・大あごのキバ
女王バチのキバは他の女王バチに噛みつくためだけにあります。
一方、働きバチのキバは花粉をかじる、巣を掃除する、においの違う他の群れのハチや異変を起こしたハチが巣に入ろうとした時に噛みつくほか、仲間についてしまったダニを取り除く時にも、このキバを使います。

この他にもミツバチの体には花蜜を巣に持ち帰るために一時的に貯める場所である蜜胃や、集めた花粉を付着させて運ぶ花粉かご、特殊な脂肪酸を出してローヤルゼリーの成分にする大アゴ腺があり、たんぱく質を分泌する下咽頭腺は蜜を集める働きバチになると、ショ糖を分解する酵素を出すように変化します。※2、3、4

 

※4 J-STAGE ミツバチの配偶行動 / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/27/7/27_7_466/_pdf/-char/en
※5 J-STAGE ミツバチの尻振りダンスと採餌行動における効果 / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/3/29_121/_pdf/-char/ja
※2 誰でも飼える日本ミツバチ 現代式縦型巣箱でらくらく採密 藤原誠太著 2010年6月発行 農山漁村文化協会
※3 ミツバチの文化史 渡辺孝著 1994年5月発行 筑摩書房

ローヤルゼリーはパーフェクトフード

ローヤルゼリーの成分

ローヤルゼリーだけを生涯食べ続けることで、コロニーに女王として君臨する女王バチ。
女王バチの一生を支えるローヤルゼリーにはどのような栄養素が隠れているのでしょうか。

ローヤルゼリーにはおおよそですが、水分が65%、タンパク質とアミノ酸が13%、糖質が10%、脂質が約5%、その他成分が約7%含まれているといわれています。※6
タンパク質を構成しているのはアミノ酸ですが、ローヤルゼリーには必須アミノ酸が9種類、アミノ酸が15種類含まれています

・必須アミノ酸
リジン、フェニールアラニン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、トレオニン、メチオニン、バリン、スレオニン、トリプトファン

・アミノ酸
アルギニン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸、チロシン、β-アラニン、シスチン、グリシン、アスパラギン、プロリン、セリン、グルタミン、タウリン、アラニン、オキシプロリン、アスパラギン酸

また、糖類ではグルコース、フルクトース、スクロース、オリゴ糖を含み、ビタミンでは10種類もの豊富な種類が含まれます
栄養上欠かせないミネラルであるカリウムやリン、マグネシウム、カルシウムの含有量も高く、その他にも鉄や銅、亜鉛なども含まれています。
このようにいろいろな栄養素をバランスよく含んだローヤルゼリーはパーフェクトフードと呼ばれています。
しかし、ローヤルゼリーには他の物質には存在が認められない特有成分が含まれるなど、現在でもその元気パワーの仕組みが分かっていない部分もあります
その成分の一つが、デセン酸です。
デセン酸は通称ローヤルゼリー酸と呼ばれる脂肪酸で、女王バチ特有のフェロモンに似た物質です。※1、7、8

 

ローヤルゼリーの生産

女王バチの寿命は日本ミツバチではだいたい2~3年、働きバチでは成虫になってから20日~30日です。
働きバチはこの短い期間にいくつもの仕事をこなし一生を終えますが、女王になる幼虫をどのように見抜きローヤルゼリーのみを与えているのでしょうか。
女王バチになる卵は決して特別な卵ではありません。
与えられる餌がローヤルゼリーかどうかだけで、女王バチになるかどうかが決まります。
つまり、働きバチになる幼虫でも卵から孵化してからローヤルゼリーを与え続けると、女王バチになります。
実は女王バチになる卵は、他よりも大きめの巣房である王台に産み付けられます。
働きバチはこの大きさの違いを見分けローヤルゼリーを王台へと運びます。
養蜂家は働きバチのこのような行動を利用し、王台と同じ大きさの入れ物を作って巣の中に入れることで大量のローヤルゼリーを手に入れることができるようになりました。※2、7

※1 J-STAGE ローヤルゼリーとハチミツ / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/27/5/27_5_291/_pdf/-char/ja
※6 アグリナレッジ、ミツバチ科学 ローヤルゼリーの一般化学成分について / 2019年7月29日閲覧
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010250527
※7 (社)全国ローヤルゼリー公正取引協議会 ローヤルゼリーの成分 / 2019年7月29日閲覧
http://www.rjkoutori.or.jp/know/ingredient.html

※2 誰でも飼える日本ミツバチ 現代式縦型巣箱でらくらく採密 藤原誠太著 2010年6月発行 農山漁村文化協会
※8 脂肪酸と健康・生活・環境-DHAからローヤルゼリーまで- 彼谷邦光著 1997年6月発行 裳華房 

ローヤルゼリーを上手に摂るには

ローヤルゼリーの形状

ローヤルゼリーはミツバチによって作られるため、とれたてのローヤルゼリーを口にすることはごく稀ではないでしょうか。
ローヤルゼリーには、王台から採取されたローヤルゼリーをそのまま容器に詰めた生ローヤルゼリー、水分を蒸発させ粉末状にした乾燥ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーや乾燥ローヤルゼリーに付加価値をつけるための副材料などを加えた調整ローヤルゼリーがあります。
生ローヤルゼリーは鮮度の管理などがとても難しいため希少価値が高く、本来のローヤルゼリーの風味を楽しむことができます。
乾燥ローヤルゼリーは長期の保存が可能で、錠剤やカプセルに詰められており、手軽に健康パワーの恩恵を受けることができます。
味を楽しみたい、手軽に栄養素を摂取したいなど、用途や好みに合わせていろいろな形態を楽しむことができます。
ローヤルゼリーは人の手で加工されますし、含有される各成分の割合は一粒ごとに異なります。
前述のように、おおよそであれば栄養成分の割合も明示できるのですが、例えば外国産のローヤルゼリーと日本産のローヤルゼリーでは、含まれる成分のバランスが違いますし、同じ日本産でも数%の差が出ます。
厚生労働省でも、ローヤルゼリーの1日の摂取量は定められていません。※8、9

 

心配なことは医師に確認しましょう

健康な体を手に入れるには、毎日栄養バランスのとれた食生活や適度な運動が一番です。
1日に必要な栄養素の量は決まっており、バランスのとれた食事を摂っていると栄養が不足するという事はありません。
まずは自分の日々の生活を見直し、生活の質をあげていけるように改善していくことが大切です。
きちんとした食生活や運動を習慣にしていくことが、もっとも健康を維持できる方法です。
それにプラスするという意味で、さまざまな形態のローヤルゼリーを摂取するのは良いでしょう。
ただし、ローヤルゼリーはミツバチが作りだす自然なものではありますが、誰もがアレルギー反応を起こさないというわけではありません
普段からお薬を利用されている方やアレルギーなどの心配がある方は、事前に医師に確認をとってから、ローヤルゼリーを摂取するようにしましょう。※10、11

※9 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 / 2019年7月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
※10 厚生労働省 健康食品の正しい利用法 / 2019年7月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
※11 J-STAGE 日本アレルギー学会 / 2019年7月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/52/2-3/52_KJ00000817975/_pdf/-char/ja
※8 脂肪酸と健康・生活・環境-DHAからローヤルゼリーまで- 彼谷邦光著 1997年6月発行 裳華房

まとめ

毎日卵を産み続ける女王バチと、そのエネルギー源となるローヤルゼリー。
ローヤルゼリーは古来より、糖分だけではなく、ビタミンやミネラルをたくさん含む食品として珍重されてきました。
体によいとされる「ハチミツ」をも凌ぐとても多くの元気成分で、女王バチを支えています。
この力は、きっと私たち人間にも、パワーを与えてくれるでしょう。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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