海の幸フコイダン!!ヌルヌルパワーで元気全開!

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フコイダンという成分、なかなか聞き慣れないかもしれませんが、一言で表現するなら「海からの贈り物」です。
私たちの住む地球は表面の71%が水に覆われた星であり、大きな海には食の宝ともいうべき天然資源があります。
中でもフコイダンは、近年、人間の健康によい影響を与えると注目を集める成分です。
古くから海藻食文化の伝統をもつ日本人にとって、本当は馴染みのあるフコイダンの秘密に迫ります。

目次

  1. フコイダンとは
    • フコイダンとは
    • 日本人とフコイダンを含む海藻食文化
    • 世界から見直されているフコイダン
  2. フコイダンの栄養成分
    • フコイダンの成分
    • フコイダンの構造
  3. フコイダンの健康パワー
    • フコイダン特有の食物繊維
    • フコイダンのヌルヌルパワー
    • U-フコイダンは体中の敵をやっつける
  4. フコイダン上手に摂取するには
    • フコイダンの1日の摂取量
    • フコイダンを摂取する時の注意
  5. まとめ

フコイダンとは

フコイダンとは

フコイダンとは、海藻の表面にある独特のヌルヌルした成分の一つです。
海藻は海に生育する藻類のことで、英語ではalgae(アルジー)といい、藍藻、紅藻、褐藻、緑藻、珪藻などにわけられます。
フコイダンは藻類の中でも褐藻の中にだけ含まれる成分で、コンブやヒジキ、ワカメ、モズクといった日本食を代表するものがあります。
分かりやすいものでいうと、ワカメの仮根の上部に皺状のメカブというものがあるのはご存知でしょうか。
メカブは春先にはスーパーなどの店頭で目にする機会も多いのですが、このメカブにもフコイダンは豊富に含まれています。
メカブはコリコリとしていてとても美味しいですが、みじん切りにするとネバネバがどんどん出てきます。
まさにこの成分がフコイダンです。
ちなみに、フコイダン含有量トップクラスの沖縄モズクには「もずくの日」があります。
2002年に沖縄もずく養殖業振興協議会により、広く県内外にPRするためとして毎年4月の第3日曜日がもずくの日として制定されました。
モズクには特有の粘質がありますが、この成分もフコイダンです。
モズクは枝分かれのある糸状藻類で、モズク酢として食べきりパックのものが流通しています。
また「もずくの日」だけではなく、毎年5月5日には「ワカメの日」もあります。
フコイダンを豊富に含んだ海藻は「こどもの日」にちなみ、子供の成長に欠かせない栄養素を含んだワカメをたくさん食べてもらおうという主旨で、社団法人日本わかめ協会が制定しました。
ちょうどこの時期は新ワカメの収穫も一段落し、フコイダンや多くの栄養素を含んだワカメが市場に出回る時期でもあります。
食べ物には旬があり、この時期の食べ物は栄養が豊富なだけではなく、おいしさもギュッと詰まっています。
旬の時期こそ、フコイダンを含んだ海藻を意識して食べてみましょう。※1、2、3、4、5

日本人とフコイダンを含む海藻食文化

日本は、世界でも珍しい海藻食文化の伝統を持つ国です。
恵まれた山や森の豊かな養分を集めて海に注ぐ環境と、漁労に携わる人々のお陰で、1000年以上に渡り海藻を食べてきました。
川水が海水に混ざる浜では海藻もよく育ち、海の荒波は肉厚で弾力のある良質なフコイダンを含んだコンブやワカメを育て、漁師たちは空や風、海の変化を読み取り漁の腕や養殖技術を磨いていきました。
また、磯にびっしりと生えたヒジキや岩ノリなどの海藻は、潮の満潮差の大きい大潮の日の一斉に刈り取るなど、自然の恵みを古くから共有し大切にする心は、今も日本人の文化を支えています。
フコイダンは浜に生きる人の厳しい労働と、丁寧な手仕事により育まれているのです。※1、2、3、4、5

世界から見直されているフコイダン

海藻はもともと、北海道南部から九州まで日本列島沿岸の広い範囲で自生し、各地で採取される身近なものでしたが、現在では全国の収穫量の95%以上が養殖です。
天然のワカメは岩礁に根を張り、養殖のワカメはロープに根をからませ、海中の栄養と太陽の光で育ちます。
海藻は主に三陸沿岸、岩手県と宮城県で国産の約7割が生産されています。
また近年では、海藻の素晴らしさが世界的にも注目されるようになりました。
かつてはseaweedとよばれ海の雑草とされてきた海藻は、今ではsea vegetables海の野菜とよばれるようになりました。
しかし、日本人の食文化も変化し、和食は日本の家庭料理でも登場する回数が減りつつあります。
逆に、フコイダンなど海藻のパワーに注目し始めたのが諸外国です。
それまでのタンパク質、脂質、糖質といった科学的なバランスではなく、動物食、植物食、菌類食に加え海藻などの藻類食の4つの生物学的バランスで食べることが自然の理にかなっているという、新しい栄養論「藻食論」が、提唱されるようになりました。※1、2、3、4、5

※2 J-STAGE 昆布由来多糖-フコイダン- / 2019年11月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/55/7/55_7_488/_pdf/-char/ja
※1 サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会著 2017年6月第2刷発行 集英社
※3 三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80 婦人之友社編集部編 2017年3月第1刷発行 主婦の友
※4 ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー 竹中 裕行著 2017年7月発行 成山堂書店
※5 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版

フコイダンの栄養成分

フコイダンの成分

フコイダンのヌルヌル成分は、海藻が潮の流れや衝撃で傷がつかないために進化してきた栄養素です。
また、周囲の微生物からも身を守る成分でもあります。
フコイダンを多く含むガゴメは、葉内部に粘液腔道というフコイダンを溜める管がよく発達しています。
この管の中にあるフコイダンには強い粘性はありませんが、一旦葉が傷つき海水とフコイダンが混ざるとカルシウムやマグネシウムといったミネラルと複雑に反応し強いゼリー状の塊を作ります。
また、市販の乾燥昆布といえば出汁を取るイメージがありませんか。
しかし、生きた昆布は海水に長くいても出汁がでることはありません。
これは一見不思議な現象に思えますが、その秘密はコンブ類の持つ性質にあります。
コンブ類は乾燥に大変弱く、数時間干されると死んでしまいます。
昆布の出汁となる成分は昆布が生きるために必要な成分であり、死んでしまうことにより体を守る働きを失い、重要な物質である健康パワーが出汁となって出てくるのです。※1、5、6、7、8

フコイダンの構造

フコイダンの発見は1913年のことになります。
スウェーデンのウプサラ大学でキリン教授により発見されたのですが、フコイダンの化学構造は長い間明らかにはなりませんでした。
当時キリン教授は「酸の性質を有し、加水分解すれば糖成分としてフコースが存在する」とだけ報告しており、その後に多くの仮説が立てられ、議論が繰り変えされました。
1996年になり、初めてガゴメからの化学構造が明らかにされ、ほとんどが硫酸化フコースからなる多糖であることから、F-フコイダンと命名され、続けてU-フコイダン、G-フコイダンと名付けたフコイダンが明らかになりました。
フコイダンをオリゴ糖単位で切断できる酵素が、海洋細菌をスクリーニングして得られたことから、さまざまな化学構造が明らかにされました。
つまり、フコイダンはフコースを主体とした硫酸化多糖の総称ということになります。
褐藻類の中でも沖縄モズクには特に多くのフコースが含まれているのですが、フコイダンは褐藻の種類によってもそれぞれ構造が異なります。※1、5、6、7、8

※6 J-STAG 分子量および構成成分の違いによるフコイダンの生物活性 / 2019年11月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/58/5/58_5_273/_pdf
※8 J-STAG ガゴメ昆布フコイダンの健常成人における安全性 / 2019年11月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/8/2/8_2_45/_pdf
※1 サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会著 2017年6月第2刷発行 集英社
※5 NHK出版からだのための食材大全 NHK出版編 2018年11月第1刷発行 NHK出版
※7 みんなが知りたいシリーズ1 海藻の疑問50 日本藻類学会編 2016年6月初版発行 成山堂書店

フコイダンの健康パワー

フコイダン特有の食物繊維

フコイダンは、人に必要な栄養素の中でも食物繊維の一種です。
食物繊維は人の消化酵素では消化できない成分のことで、体内環境を改善するなど大きな特徴があります。
少し前までは食物繊維も食べ物のカスとされていたため、栄養成分としての評価がなされていませんでした。
しかし近年では体内の細菌により分解・発酵を経てエネルギー源となることや、短鎖脂肪酸に変化するなどの健康機能が明らかになり注目を集めています。
食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維水に溶ける水溶性食物繊維に分類されますが、フコイダンは水溶性食物繊維です
人にとって食物繊維は、体の中、特にお腹の中にある有害物質を掃除する役割があります。
これらの物質が体内で長く留まると、不快なだけではなく、将来的に大きく健康を損なう可能性もあります。

元気な体をつくるためには、食物繊維をしっかりと摂ることが必要です。
食物繊維の1日の摂取基準は成人男性では20g以上、成人女性では18g以上とされています。
しかし、食物繊維はなかなか摂りにくい成分でもあります。
食物繊維が比較的多いとされるゴボウでも、1/2本あたり約5.7gしか含まれていません。
海藻は主にビタミン、ミネラルを含む食品に分類されます。
このような副菜は野菜料理とされ、1日で5皿程度摂取するのがよいとされています。

フコイダンを含む海藻を使った海藻サラダやヒジキの煮物など、昔ながらの惣菜も小鉢で1品追加し、食卓に並べるようにしましょう。※1、9、10

フコイダンのヌルヌルパワー

フコイダンには外敵から身を守るシステムを助ける働きがあります。
年齢を重ねた体は日々、ストレスや紫外線、排気ガスなど多くの環境因子と戦っており、ジワジワと元気を失っていくことになります。
このように少しずつ弱ってしまった体は、外敵に侵入されてしまうと、跳ね返す元気がありません。
しかし、元気を失いやすい現代人に活力を与えてくれるのが、フコイダンのヌルヌルパワーなのです。
フコイダンには体の中に侵入してきた異物の働きを抑え、死滅させる力があるとされています。
また、ヌルヌル成分には体内の粘膜を保護するだけではなく、異物を吸着して体外へ排出する働きもあり、体内で弱った部分を修復しようとする働きもあるのです。
さらに、この独特のヌルヌルには体内での脂肪のバランスをコントロールする働きも認められています。※1、12

U-フコイダンは体中の敵をやっつける

フコイダンの一種に、グルクロン酸という成分を含む、U-フコイダンがあります。
このU-フコイダンにはアポートシスを促す働きがあります。
アポートシスとは自滅作用のことをいい、ギリシア語の秋に葉が枯れ落ちる状態が語源とされます。
私たちの体は日々新しく作り変わっていくのですが、古くなった部分は自然に消滅する機能を、自らが備えています。
これは成長するために、とても大切な機能です。
しかし、日々新しく生まれ変わる中、体内で正常なものとは違うものが作られてしまうことがあります。
U-フコイダンは体内でこのように正常とは違うものを見つけると、そのDNAに働きかけアポートシスを促します。
他にもフコイダンは、特定の食物の消化が困難になる原因とされる、レクチンの受容体として機能することが分かってきたことから、これらの予防効果が期待されています。※1、11、12

※9 e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康 / 2019年11月29日閲覧
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
※10 厚生労働省 日本人の食事摂取基準 / 2019年11月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
※11 J-STAGE アポートシスの分子機構 / 2019年11月29日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/31/2/31_2_122/_pdf/-char/ja
※1 サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会著 2017年6月第2刷発行 集英社
※12 栄養の基本がわかる図解辞典 中村 丁次監修 2015年7月発行 成美堂出版

フコイダン上手に摂取するには

フコイダンの1日の摂取量

フコイダンの1日の摂取量というものは決められていません。
これは、フコイダンは「体を作る」または「体を動かすエネルギー源」ではないことから、必要性最低限の栄養素ではないためです。
しかし体の健康を維持していくためにはとても大切な栄養素です。
毎回の食事に海藻を使い、小まめにフコイダンを摂取するよう心がけましょう。
フコイダンは体内では分解されにくいといった特徴がありますので、吸収の良くなる酢と一緒に摂取するとよいでしょう。
また、フコイダンは熱にも強いので、出汁以外にもおでんや味噌汁、天ぷらなどでも美味しく摂取することができます。
コンブの旨味の主成分であるグルタミン酸は、鰹節の旨味成分であるイノシン酸と組み合わせるとより美味しく感じられるようになるため、栄養だけではなく味の面でも楽しむことができるでしょう。
それでは、保存にもお勧めのコンブの煮物のレシピをご紹介します。
【コンブの煮物】
1.コンブはぬるま湯で洗って、長いまま折りたたみ結び目を作って切り、たっぷりの湯で煮立たせて塩抜きを行う。(これを2~3回繰り返す)
2.鍋に水、みりん、めんつゆ、砂糖を煮立たせ、1を入れて10分煮る。
このような保存食は1品足りない時にさっと出せるだけではなく、茹でたホタテなどを加えると立派な肴にもなります。
美味しく、手軽にフコイダンを補給できるため、大鍋に一杯煮て保存しておくと良いでしょう※1、3、12

フコイダンを摂取する時の注意

日本でも有数の長寿県として知られる沖縄県、ここでは日常的に海藻をたくさん食べています。
よく食べられているコンブや沖縄モズクには、フコイダンが特に多く含まれています。
沖縄県民の健康維持の要因の一つにはフコイダンが関係しているとも考えられており、この食品からフコイダンを摂取することは大変体に良いとされています。
しかし、毎日海藻ばかりを大量に摂取していると、その他の栄養バランスを大きく崩してしまいます。
日々、バランスのとれた食事を意識したうえでフコイダンを摂取し、健康的な毎日を送りましょう。
食品以外からフコイダンを摂取する際には、その他に含まれる栄養素の過剰摂取による体調不良が心配されるケースもあります。
食品以外からのフコイダンを摂取する場合には、必要以上に摂取しないように注意しましょう。
また、天然成分でもあるフコイダンは医薬品との相互作用は報告されていないため、お薬との併用も問題ないとされています。
しかし、フコイダンの摂取で気になる事や心配がある場合には、主治医に相談してみると良いでしょう。※1、3、12

※12 厚生労働省 健康食品の正しい利用法 / 2019年11月29日閲覧
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
※1 サプリメント健康辞典 一般社団法人 日本サプリメント協会著 2017年6月第2刷発行 集英社
※3 三陸わかめと昆布 浜とまちのレシピ80 婦人之友社編集部編 2017年3月第1刷発行 主婦の友社

まとめ

私たちは日々、時間に追われながら、仕事や家事、育児に励んでいます。
時にはクタクタになり、体が悲鳴を上げることもあるのでしょう。
ゆっくりと休養をとりたい、でもなかなか現状はそうはいきません。
こんな時には天然のヌルヌル元気成分であるフコイダンを毎日少しずつ摂取してみましょう。
きっと、強い体が作られ、毎日を楽しく過ごせるのではないでしょうか。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
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