無限の可能性を秘めたユーグレナは意外と身近な存在だった!

公開日:2020.10.05

ユーグレナの和名は「ミドリムシ」といいます。
そうです!
小学校の理科の授業で耳にしたあの小さなミドリムシです。
いま、このミドリムシは食料だけではなく、私たちの美容や健康、さらにはジェット機をも飛ばす燃料や世界の食糧問題をも解決すると大きな注目を集めています。
あの小さな物体に、一体どんな力が秘められているのでしょうか。

目次

  1. ユーグレナってなに?
    • マイクロアルジェと呼ばれる生物
    • ユーグレナ(ミドリムシ)は虫じゃない?
  2. 未来をつくるユーグレナ
    • 世界初のユーグレナの大量培養成功
    • 無限の可能性をもつユーグレナ
    • ユーグレナが作り出す未来予想図?
  3. ユーグレナだけがもつ有効成分とは
    • ユーグレナだけがもつ有効成分パラミロン
    • ヒトの体にユーグレナが入ったら?
  4. まとめ

ユーグレナってなに?

マイクロアルジェと呼ばれる生物

近年ユーグレナが話題になっていますが、これがどんなものなのかを知っている人は少ないでしょう。
実はユーグレナはマイクロアルジェと呼ばれる藻の一種であり、しかもとても身近な存在といえるものなのです。
和名の「ミドリムシ」から、「虫」を想像する人も多いかもしれませんが、実は虫ではなく藻の仲間なのです。

ところで、マイクロアルジェという言葉を聞いたことがありますか?
マイクロアルジェは24億年前に誕生してから現在に至るまで、絶えず酸素を供給し続け、この地球を美しい生命にあふれた星に作り変えてくれました。
マイクロ(micro)は「微細な」や「極小な」を、アルジェ(algae)は藻類を意味しています。
日本語では「微細藻類」で知られています。
ちなみに、マイクロの反対語である「大きい」を意味したマクロ(macro)なアルジェもあります。
マクロアルジェは大型藻類といいワカメやコンブ、ノリなどがあります。
マイクロアルジェは30万種以上存在しているといわれ、その性質や姿、生き方などは種によってそれぞれ違います。
また生息場所も実にさまざまで、水分の多いところに集中はしていますが、80℃を超える高温の温泉水の中や、ほとんど雨の降らない砂漠地帯、さらには凍てつく氷雪の上で生息するものもいます。※1、2

ユーグレナ(ミドリムシ)は虫じゃない?

ユーグレナの学名は「Euglena」で美しい眼というラテン語が語源となっています。
これは顕微鏡で確認されたときにユーグレナに赤い斑点があり、これが目に見えたことから、この名がつきました。
しかし、この赤い斑点は本当の目でありません。
本当の目は、鞭毛の根元近くにある感光点と呼ばれる器官です。
この器官は、光に反応するたんぱく質で出来ているため、これが「目」とされています。

また、ユーグレナの体内には「葉緑体」が存在しています。
葉緑体は植物に存在する物質で、水と二酸化炭素と光から「光合成」を行い、栄養分を体内に蓄えます。
これは、ミドリムシがワカメやコンブと同じ藻類の仲間であることを示しています。

しかしユーグレナは「藻」の一種とされながらも、動物と植物両方の性質を持つ、非常に珍しい生物です。
全身に見られる緑色の粒々を使って、空気中の二酸化炭素から栄養分を得るため、動物の口にあたるような「捕食器官」はもっていません。
それでは完全な独立栄養生物なのか、というとそうでもないのです。
周りに有機物があれば、ユーグレナはそれを吸収して栄養にして増殖していくことができます。
そのため光の届くことのない場所でもユーグレナがたくさん発見されたり、富栄養化した池などでも増殖が確認されることがあります。※1、2、3

また、ユーグレナには2本の鞭毛(べんもう)があります。
1本は短く身体の中に隠れているのですが、この鞭毛をうまく使いクネクネと動く姿は「ユーグレナ運動」と呼ばれています。
殻のないユーグレナの細胞が小さくなったり、全体的に身をくねらせるこの運動は、「変形運動」とも呼ばれます。
小さな仮足を伸ばすアメーバ運動とは、違う運動であるとされています。
つまり、ユーグレナは自立運動をすることから動物であるとも考えられ、植物であり動物でもあるという認識となっています。※1、2

これまで、この植物であり動物でもあるユーグレナを活用しようと、さまざまな研究が行われてきましたが、その成果が実を結ぶことは実に困難を極めました。
あのNASAですら、ユーグレナの研究に成功することはできなかったのです。
そんな中、2005年にユーグレナの大量培養に成功した企業が登場しました。
次は、研究に研究を重ね、ユーグレナを世界で初めて大量培養した人物について見てみましょう。※4、5

※4 J-STAGE ユーグレナミトコンドリアの糖代謝系におけるユニークな酵素 特殊な融合型酵素が映し出すミトコンドリアの進化 / 2019年1月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/50/11/50_789/_pdf
※5 株式会社ユーグレナ ユーグレナプロジェクトvol.01 誰もなし得ていない、ミドリムシの屋外大量培養技術を確立せよ。2019年1月30日閲覧
https://www.euglena.jp/projects/massculture/ 
※1 竹中 裕行著 2017年7月発行 ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー 成山堂書店
※2 石川 憲二著 2013年10月発行 ミドリムシ大活躍!-小さな生物が創る大きなビジネス- 日刊工業新聞社
※3 孫 奈美編著 2014年2月発行 未来をつくるこれからのエコ企業食糧にも燃料にも⁉ミドリムシで世界を救う 汐文社

未来をつくるユーグレナ

世界初のユーグレナの大量培養成功

ユーグレナの大量培養が困難とされたのは、生存環境の条件が難しかったことや、他の生物のエサとなり死滅してしまうことなどが、その理由でした。
ユーグレナといえば、光と水、そして酸素があればどこでも育てられるという認識でしたが、商業向けに大量培養するということは難しかったのです。

このユーグレナの研究に大きな変革をもたらしたのが出雲氏です。彼は東京大学在学時にアジアで最も貧しいとされるバングラデシュを訪れました。
予想とは違いバングラデシュでは、お腹をすかせた子どもを見かけることはありませんでした。
しかし、日常的に野菜や魚、肉などは貧しい人達には買うことができず、ビタミンや鉄などの栄養素は不足していました。
コメやイモなどの炭水化物は十分にあっても、栄養素の不足から生命の危機にさらされている子どもが大勢いたのです。
一粒ですべてもの栄養素を満たす食べ物があったら。」こんな思いを胸に抱き、研究を重ね出会ったものが、ユーグレナでした。
出雲氏は、ユーグレナの栄養価と二酸化炭素を酸素に変える力は、貧困問題や二酸化炭素の問題を軽減できると考えました。
その後、ユーグレナに関する研究を、東京大学在学中にスタートさせます。
数十年前から、ユーグレナの研究が世界各地で行われてきましたが、世界で初めてユーグレナの大量培養に出雲氏が成功したのは、2005年12月のことでした。※3、5

無限の可能性をもつユーグレナ

大量培養の成功後、出雲氏はミドリムシの持つ栄養素を活用して、さまざまな製品を開発します。
この市場には多くの企業が参入するようになり、手軽にユーグレナの配合された商品が手に入るようになってきました。
ユーグレナの健康を支える勢いは国内だけはなく、中国へも広がっていきます。
中国ではユーグレナを「新食品原料」として登録するところから始まり、食品原料として認められたユーグレナは中国人の健康も支えています。
また食品面だけではなく、ユーグレナを環境技術へ活用するといった研究も行われました。
ユーグレナは優れた光合成能力を持ち、15~20%の高濃度のCO2を吸収することができるということから、火力発電所の排ガスを使ってユーグレナを培養することを試みたのです。
排ガスの通気が原生動物の増殖を抑え、ユーグレナのみが増殖できる環境を作り出すことに成功し、これはユーグレナが持つ「可能性」を、世に知らしめるものとなりました。
そして2015年には、下水処理施設の下水・排水を利用してのミドリムシの培養研究がはじまります。
濁った下水での培養は、光を通さないため光合成で育つのは難しく、下水を薄めたり足りない栄養素を足したりと思考錯誤が繰り返されました。
研究は重ねられ、下水・排水を活用したユーグレナの培養は従来よりも大幅にコストを低減でき、さらに下水中の窒素やリンはミドリムシの培養に利用することで、下水処理場への負荷も低減する効果も期待できるものとなりました。
このように、ユーグレナをさまざまな形で活用してきた出雲氏は、ついには前例のないバイオ燃料事業の実現に向けた、ミドリムシの品種改良法の開発に乗り出します。
そして特定のユーグレナを選抜する方法を世界で初めて確立し、野生のユーグレナよりも多くの油を含むユーグレナの獲得に成功したのです。※1、3、6

ユーグレナが作り出す未来予想図?

ユーグレナは食品や排ガス、下水、排水といったものだけでなく、まだまだ活用できる万能な生物です。
その活路を見い出す研究のうち、驚くべきもののひとつしてあげられるものが、ジェット機を飛ばす、というものです。
あの小さな生物がジェット機を飛ばすなんて誰も考えてもみなかったでしょう。

実は、ユーグレナから抽出される油分は、その組成がジェット燃料に近いことが分かりました。
その研究に端を発し、今ではジェット燃料の代替エネルギーとしての利用が、期待されているのです。
しかもユーグレナからいったん生産した燃料は、改質することで、他の炭化水素と同質の油にしていくことが可能なため、ユーグレナからディーゼル燃料やガソリンの代替燃料、さらにはガス燃料などを生産していくことも可能だと考えられています。
ユーグレナによるジェット燃料の生産が軌道に乗れば、その他の燃料への水平展開がなされていくでしょう。

また化粧品の事業化も動き出しました。
ユーグレナから取り出されたエキス(加水分解ユーグレナエキス)には、若々しさを保つ働きが見つけ出されたのです。
その他にもユーグレナの個性的な物質は、今までにない医薬品を作り出すのにも役立つのではないかと考えられている他、重要な栄養成分を豊富に含んでいるという素晴らしい特徴から、食糧不足問題を解決するという実に大きな理想に向かってユーグレナの研究は日々前進をつづけています。※1、3

※5 株式会社ユーグレナ ユーグレナプロジェクトvol.01 誰もなし得ていない、ミドリムシの屋外大量培養技術を確立せよ / 2019年1月30日閲覧
https://www.euglena.jp/projects/massculture/
※6 株式会社ユーグレナ ユーグレナプロジェクト vol.12 下水処理場の汚水を活用し、ミドリムシを培養せよ / 2019年1月30日閲覧
http://www.euglena.jp/projects/saga/
※1 竹中 裕行著 2017年7月発行 ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー 成山堂書店
※3 孫 奈美編著 2014年2月発行 未来をつくるこれからのエコ企業食糧にも燃料にも⁉ミドリムシで世界を救う 汐文社

ユーグレナだけがもつ有効成分とは

ユーグレナだけがもつ有効成分パラミロン

ユーグレナが最初に注目されたのは、そこに含まれる豊富な栄養素でした。
ユーグレナを人工的に培養し、乾燥した食品原料を分析すると、摂取できる栄養素は59種類にも及びます。※2

 

・ビタミン(14種)
α-カロテン・β-カロテン・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンC・ビタミンD・ビタミンE・ビタミンK1・ナイアシン・パントテン酸・ビオチン・葉酸

 

・ミネラル(9種)
マンガン・銅・鉄・亜鉛・カルシウム・マグネシウム・カリウム・リン・ナトリウム

 

・アミノ酸(18種)
バリン・ロイシン・イソロイシン・アラニン・アルギニン・リジン・アスパラギン酸・グルタミン酸・プロリン・スレオニン・メチオニン・フェニルアラニン・ヒスチジン・チロシン・トリプトファン・グリシン・セリン・シスチン

 

・不飽和脂肪酸(11種)
ドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)・パルミトレイン酸・オレイン酸・リノール酸・リノレン酸・エイコサジエン酸・アラキドン酸・ドコサテトラエン酸・ドコサペンタエン酸・ジホモγ-リノレン酸

 

・その他(7種)
パラミロン・クロロフィル・ルテイン・ゼアキサンチン・GABA・スペルミジン・プトレッシン

 

ユーグレナは、動物と植物の両方の性質があることから、動物に含まれる栄養素と植物に含まれる栄養素を併せ持っています。
野菜や果物に多く含まれるビタミン、乳製品や海藻に多く含まれるミネラル、加えて肉、卵、乳製品に多く含まれるアミノ酸、さらには青魚に多く含まれるDHA、EPAといった不飽和脂肪酸などをバランスよく含んでいます。
中でも注目したい栄養素が「パラミロン」です。
これは他の生物にはみられない栄養素です。
ブドウ糖(グルコース)が長く連なった多糖類でβ-グルカンの一種です。
β-グルカンの仲間には、主にアガリスクなどのキノコ類や海藻類、酵母類に多く含まれていて健康維持に効果があるとして注目を集めている成分です。※1、2

ヒトの体にユーグレナが入ったら?

ユーグレナだけではなく、栄養価の高い食材はたくさんあります。
しかし、人間は植物(ほうれん草などの野菜)から栄養を摂取するのは難しいとされています。
例えば、ユーグレナと比較されることが多いのは「クロレラ」ですが、これは藻の一種ですので植物です。
クロレラとユーグレナの吸収率を比較すると、クロレラは40%前後であるのに対し、ユーグレナは93.1%であるといわれています。
この吸収率の違いは、とても大きいですが、なぜこれほどまでに違うのでしょうか。
それは植物には細胞壁があり人間は細胞壁を破壊するセルラーゼという成分をもっていないためです。
植物には細胞壁があるために、どれだけ上手に調理したとしても取り込むことのできる栄養の割合は大きく減ってしまうのです。
一方のユーグレナには細胞壁がありませんので、吸収率が非常に高くなります。
ユーグレナは栄養素を多く含みながら、しかもほぼすべての栄養素を体内に取り込むことができるのです。※2、3

体内に取り込まれたユーグレナは胃腸で消化されにくいため、便として排出されます。
この働きは不溶性植物繊維と似た働きで、胃腸内にある余計な油や老廃物を吸着して体外に便として出します。
ユーグレナは、生命維持に必要な必須栄養成分をたくさん含んでいて、しかもそれを効率よく摂取できるうえに、生命維持に不必要なもの、毒になるようなものは体外に排出してくれるという効果を併せ持っていることになります。※7、8

※7 J-STAGE ラットにおける[14C]コレステロールの吸収, 体内移行に及ぼすユーグレナ(Euglena glacilis z)の影響 河野 裕一、中野 長久、北岡 正三郎、加藤 清、重岡 成、大西 俊夫 / 2019年1月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/40/3/40_3_193/_pdf
※8 J-STAGE  Euglena gracilisタンパク質の人工消化実験およびネズミ飼育試験による栄養価の決定 細谷 圭助、北岡 正三郎 / 2019年1月30日閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/51/8/51_8_483/_pdf/-char/ja
※1 竹中 裕行著 2017年7月発行 ミドリムシの仲間がつくる地球環境と健康 シアノバクテリア・緑藻・ユーグレナたちのパワー 成山堂書店
※2 石川 憲二著 2013年10月発行 ミドリムシ大活躍!-小さな生物が創る大きなビジネス- 日刊工業新聞社
※3 孫 奈美編著 2014年2月発行 未来をつくるこれからのエコ企業食糧にも燃料にも⁉ミドリムシで世界を救う 汐文社

まとめ

ユーグレナは食品という枠を飛び出し、多くの分野でその可能性が研究・開発されています。
その中でも特に期待されているのは、人間の健康や地球環境、資源の問題解決などです。
これらは、いま最も重要と考えられている課題といっても過言ではありません。
ユーグレナはまだまだ秘めた可能性をもっているのです。
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ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
公開日:2020.10.05
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