畑のお肉からできた飲み物「豆乳」。豆乳で健康とキレイを手に入れよう!
スーパーの売り場で色とりどりのパッケージを見て、豆乳にここまでのバリエーションがあるのかと驚く方も多いでしょう。
ここ数年、豆乳は人気の飲料の座を確固たるものにしています。
なぜこんなにも人気があるのでしょうか。
それは豆乳が持つスゴイ力に秘密があります。
豆乳のことを詳しく知れば知るほど、健康維持のために取入れたくなってしまうでしょう。
豆乳のもつ、健康パワーに迫ります。
目次
- 豆乳は何からできている?
- 豆乳の原材料
- 豆乳のつくり方
- 豆乳が体に良い理由
- 豆乳に含まれる成分
- たんぱく質の働き
- 大豆イソフラボンの働き
- 大豆レシチンの働き
- 大豆サポニンの働き
- 大豆オリゴ糖の働き
- ビタミンとミネラル
- 豆乳は乳製品ではない
- 豆乳と牛乳の違いを知る
- 豆乳とアレルギーとの関係
- 乳幼児期のアレルギーと離乳食
- 違うタイプの大豆アレルギーもある
- 豆乳を美味しく摂る方法
- 野菜たっぷり豆乳カレー
- まとめ
豆乳は何からできている?
豆乳の原材料
豆乳の原材料は、ずばり大豆です。
大豆とはマメ科の植物の種子のことをいいます。
大豆はその成長過程の中でさまざまな養分を取り込み、豊富な栄養素を作っていきます。
地上では日光を浴びて葉や茎、さやの光合成で作られた養分を取り込み、土の中では根から養分を吸収します。
取り込まれた養分は種子に送られ、種子の中に豊富な栄養成分を溜めていくのです。
大豆は「畑のお肉」とも呼ばれますが、たんぱく質が豊富に含まれていることや、動物性の肉類にもひけを取らないことが、その理由です。
また、体を動かす炭水化物(糖質)、エネルギー源となる脂質、体をつくるたんぱく質の量がほぼ等しく、その栄養バランスの良さも優れており、さらには私たちの体を整える働きを持つミネラルやビタミンも豊富に含まれています。
この豊富な栄養成分を含む大豆の加工品である豆乳は、固形の食品に比べ、手軽で簡単にその成分を摂取することができる優れた食品であるといえます。※1
豆乳のつくり方
豆乳とは「大豆を水に浸してすりつぶし、水を加えて煮詰めた汁を濾した飲み物」です。
原料である大豆の精選、脱皮、蒸煮・酵素失活、摩砕、他の原料の調合、殺菌、脱臭脱気、冷却、均質、充填密封と、多くの工程を経て製造されています。
現在ではたくさんのファンを獲得している豆乳ですが、実はよく飲まれるようになったのは戦後のことです。
それまでは大豆独特の青臭さとえぐみのある味のものしか無かったのですが、戦前から続けられていた味の改良や近代的な脱臭法が確立したことで、より身近な飲み物になりました。
日本農林規格(JAS)によると、豆乳は大豆から熱水等によりたんぱく質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(「大豆豆乳液」という)であって、「大豆固形成分が8%以上のもの」と定義されており、原料となるのは、基本的には大豆と水です。
ただし、豆乳はJASによって、水分を取り除いた残りの成分である大豆固形分がどのくらい含まれているかによって、次の3つの種類に分類・定義されていて、中には大豆と水以外の原料を使用しているものもあります。
- 豆乳:大豆固形分8%以上(大豆たんぱく質換算3.8%以上)
- 調製豆乳:大豆固形分6%以上(大豆たんぱく質換算3.0%以上)
- 豆乳飲料:果汁入り:大豆固形分6%以上(大豆たんぱく質換算0.9%以上)
- その他:大豆固形分4%以上(大豆たんぱく質換算1.8%以上)
なお、この分類による「豆乳」は、無調整豆乳とも呼ばれるもので、水に浸して蒸した大豆を絞ったそのままの乳白色の液状のものを指します。
「調製豆乳」は無調整豆乳に砂糖や塩などで飲みやすくしたもの、「豆乳飲料」は調製豆乳に果汁やフレーバーで味をつけたものをいいます。※2
※2 日本豆乳協会 豆乳について 豆乳の作り方と商品の見分け方 / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/about/made.html
※1 塚本知玄 監修 五日市哲雄・久保田博南 著 2018年7月初版第1刷発行 おもしろサイエンス大豆の科学 日刊工業新聞社
豆乳が体に良い理由
豆乳に含まれる成分
前述のとおり、豆乳は基本的には大豆と水からできていますから、大豆に含まれる成分がそのまま活かされた食品です。
豆乳100gあたりに含まれる成分量を全体に占める割合にした場合、水分90.8%、たんぱく質3.6%、脂質2%、糖質(炭水化物)3.1%、灰分0.5%となっています。
たんぱく質、脂質、糖質といった、いわゆる三大栄養素にくわえ、0.5%の灰分にはビタミンやミネラル、脂肪酸や食物繊維も含まれています。※3
また豆乳には、近年特に女性に注目されているイソフラボンや、レシチンやサポニンなど、私たちの体の働きを助けてくれるさまざまな成分が含まれています。※4
たんぱく質の働き
豆乳に含まれるたんぱく質は「植物性」であることがポイントです。
私たちの体にとって非常に重要な要素であるたんぱく質には、「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」がありますが、植物性たんぱく質は、大豆を始め米などにも含まれているたんぱく質のことをいいます。
たんぱく質というと、動物性たんぱく質をイメージする方も多いかもしれませんが、実際100gあたりのたんぱく質の量を見てみると、大豆のほうが高いのです。
一例を挙げて見ます(すべて材料100gあたり)。
- 大豆:たんぱく質33.8g
- 豚ロース肉:たんぱく質22.7g
- クロマグロ:たんぱく質26.4g ※1
大豆が畑のお肉と呼ばれるゆえんですね。
さらに植物性たんぱく質は、動物性たんぱく質に比べて、小さいエネルギーで基礎代謝を高める働きがあり、大豆たんぱく質は体内での吸収・分解に時間がかかるのが特徴です。※4
ただし、植物性たんぱく質と動物性たんぱく質のどちらかが優れているのではなく、それぞれに独自の働きがあるため、バランスよく摂取することが大切です。※1
そして、たんぱく質を構成する物質に、アミノ酸があります。
そもそも体をつくるのはたった20種類のアミノ酸で、そのうちの9種類が必須アミノ酸(体内で十分量が合成できず、食物から摂取する必要のあるアミノ酸)です。
この9種類のアミノ酸がその食品にどのくらい含まれているかを評価したものをアミノ酸スコアといい、必須アミノ酸がバランスよく含まれていればスコア100、良質たんぱく質と呼ばれます。
大豆はもちろんアミノ酸スコア100の食品です。※1
大豆イソフラボンの働き
大豆イソフラボンは、大豆の胚芽に含まれている物質です。
ポリフェノールの一種で、エストロゲン(ホルモン)とよく似た構造をしており、エストロゲンが多すぎるときには減らそうとし、足りない時はそれを補おうとしてくれます。※3
ただし、ホルモンと似たような働きをするだけに、大豆イソフラボンは、適正な摂取量を守る必要があります。
農林水産省では、食品安全委員会の考えとしての1日摂取量目安量の上限値について、「毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値70~75mg/日」とし、この量が150mgを超えてしまうと過剰摂取になるとしていますので、摂り過ぎには注意が必要です。※5
大豆レシチンの働き
人間の体は細胞でできています。
その細胞の外側を取り巻くものの成分となるのがレシチンで、全ての細胞に必須な成分です。
レシチンに含まれるコリンという物質は、体の中でアセチルコリンに変化します。
細胞の約40%は脳のはたらきに関係すると言われており、アセチルコリンも脳の働きに関係します。
レシチンを摂取することは、この関係性も強くすることになります。
また、レシチンには水にも油にもなじむ性質があり、体内の掃除係としても働いています。※1
大豆サポニンの働き
サポニンは、植物の茎や根や葉に含まれる、苦みやえぐみの成分です。
こちらもまた、水にも油にもなじむ性質と、特に水に溶かすと泡立つという特徴もあります。
豆乳の原料である大豆を煮ると泡立つのは、サポニンによるものです。
水にも油にもなじむため、大豆サポニンもまた掃除係として働くことで、私たちの日々の健康をサポートしてくれています。※1
大豆オリゴ糖の働き
大豆オリゴ糖には、ラフィノースとスタキオースの2種類があります。
耐酸性、耐熱性に優れていて、砂糖の70~75%の甘みをもっているため、人工甘味料として使われることも多い成分です。
また、大豆オリゴ糖はビフィズス菌や乳酸菌の栄養源になりますので、これらが増えることもサポートしてくれます。※1
ビタミンとミネラル
豆乳にはビタミンやミネラルも含まれています。
ビタミンB群は脳の働きを保ち、ビタミンEは細胞を強くし、強く元気な体、キレイな体をつくります。
カリウムには体の中のナトリウムを排出する働きがあり、塩分摂取量が多い日本人は積極的に摂取すべき栄養素の一つです。
マグネシウムは、体のさまざまな働きを調整する役割を担います。
安定して摂取することが必要ですが、1日の摂取量はマグネシウムと深い関係にあるカルシウム600mgに対し、マグネシウム300mgが良いことが分かってきました。※1
※3 食品成分データベース 豆類/だいず/[その他]/豆乳/豆乳 / 2019年9月27日閲覧
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04052_7
※4 日本豆乳協会 豆乳について 豆乳の栄養成分 / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/about/component.html
※5 農林水産省 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A / 2019年9月27日閲覧
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_daizu_qa/#b1
※1 塚本知玄 監修 五日市哲雄・久保田博南 著 2018年7月初版第1刷発行 おもしろサイエンス大豆の科学 日刊工業新聞社
豆乳は乳製品ではない
豆乳と牛乳の違いを知る
豆乳も牛乳も栄養価の高い優れた食品です。
どちらも良質なたんぱく質を多く含む飲み物という共通点があります。
良質なたんぱく質とは、必須アミノ酸をバランスよく含んでいるもののことを言います。
豆乳も牛乳もアミノ酸スコア100ですから、いずれも人間の体にとって望ましい必須アミノ酸の割合が含まれている食品です。
良質なたんぱく質であるという共通点とは反対に、豆乳と牛乳には大きな違いがあります。
それは、豆乳は植物性、牛乳は動物性であるという点です。
牛から搾った乳である牛乳は、動物から得られたものですから動物性です。
動物性の食品にはアミノ酸スコアが高いものが多いのですが、同時に脂質を多く含むため特にバランスよく摂ることが大切です。
実際、牛乳100gあたりの脂質は3.8gと、豆乳2.0gに比べやや多く、コレステロールを含んでします。※1、2
一方の豆乳は、コレステロールを含まない食品です。
逆に、豆乳は牛乳に比べカルシウムが少ないですが、マグネシウムとカリウム、大豆イソフラボンが多く含まれているため、体を強く丈夫にすることにも良いとされています。※6
※6 日本豆乳協会 豆乳Q&A / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/about/QA.html
※2 塚本知玄 監修 五日市哲雄・久保田博南 著 2018年7月初版第1刷発行 おもしろサイエンス大豆の科学 日刊工業新聞社
豆乳とアレルギーとの関係
乳幼児期のアレルギーと離乳食
近年、さまざまなアレルギー症状を訴える人が増えています。
中でも、食物が原因で引き起こされるものが、食物アレルギーです。
原因となるもののことをアレルゲンといい、豆乳の原料である大豆もアレルゲンとなりうる食物です。※6、7
食物アレルギーは乳児期に最もよくみられますが、成長につれて反応が起こりにくくなってきます。
これは、食品に含まれるたんぱく質を、アレルギーが起こりにくい程度の小さな分子量にまで消化することができるようになることや、腸管の体を守る働きが整ってくることによります。※8
乳幼児(特に生後3か月未満)に豆乳を与える場合には、必ず医師の指導を受けましょう。
生後6か月くらい、離乳食にかなり慣れた頃から、離乳食に合わせて2倍程度に薄めた豆乳を少しずつ与えてみるのが良いでしょう。
豆乳のたんぱく質は分子量が大きいため、赤ちゃんでは消化できない場合もあります。
必ず便の状態を見ながら進めましょう。
3歳くらいまでは1回100ml程度まで、5~6歳でも1回200ml程度の量が目安となります。※6
違うタイプの大豆アレルギーもある
またここ数年、従来の大豆アレルギーとは違うタイプの大豆アレルギーが注目されています。
これは、アレルギーの中でも花粉症と関係があるとされており、花粉症(特にシラカバ、ハンノキなど)の症状が辛い時は、大豆でのアレルギー症状が出ることがありますので、豆乳は控えるか、少量から飲むようにしましょう。※6
※6 日本豆乳協会 アレルギーについて / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/activity_info/allergy.html
※7 日本豆乳協会 豆乳Q&A / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/about/QA.html
※8 伊藤節子著 2014年11月初版第1刷発行 抗原量に基づいて「食べること」を目指す 食物アレルギー児のための食事と治療用レシピ 株式会社診断と治療社
豆乳を美味しく摂る方法
豆乳は、手軽に良質のたんぱく質を摂り入れることができる食品です。
いつものお料理に豆乳を加えることで、栄養たっぷりのスペシャルメニューになります。
豆乳と色とりどりの野菜を使って、健康とキレイを手に入れましょう。
野菜たっぷり豆乳カレー
- 鶏肉と、玉ねぎやニンジン、ピーマン、パプリカ、カボチャ、ナス、グリーンアスパラガスなど、お好みのキレイ色野菜を適当な大きさに切る。
- 鍋にバター20gを熱し、小麦粉大さじ2とカレー粉大さじ1を練るように炒め、さらに豆乳300mlと水100mlを1に合わせてのばし、コンソメ大さじ1とミックススパイス大さじ1を加える。
- フライパンにバター20gを熱し、にんにくみじん切り小さじ1を香りが出るまで炒める。
- 1.で用意した具材を肉から順に炒め、表面に火が通ったら野菜を加えさらに炒める。
- 野菜に火が通り柔らかくなったら、2の鍋に加えて煮込む。
- 塩こしょうで味を調え、完成。※8
豆乳を使って、カレーの粉からカレールーを作るレシピをご紹介しました。
ほかにも、牛乳を豆乳に変えてたっ
※8 日本豆乳協会 豆乳レシピ / 2019年9月27日閲覧
http://www.tounyu.jp/recipe/recipe_contest.html
まとめ
豆乳やその原料大豆は、私たちの体の働きをサポートして健康な体を維持するのに大きなパワーを持っています。
日本人は大豆やその加工品を食生活に摂り入れていましたが、簡単にその力を感じられる食品が豆乳です。
大豆の持つ健康パワーを今日からの習慣にしたら、健康とキレイ、どちらも手に入れことができるかもしれません。

- 岡部 美由紀
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看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート) 他