【看護師が解説】免疫力を高める運動とは?ストレッチやツボ押しのやり方

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風邪や病気にならないためには、免疫力を高めることが重要です。
免疫力を高めるには食事・運動・睡眠と規則正しい生活を心掛けるのが基本。
ですが、仕事中心のライフスタイルでは、なかなか身体を動かせる時間もなく運動不足が続くこともありますよね。
今回は、時間が取りづらい人でも活動量が増やせる、免疫力を高めるための短時間でできる運動を紹介していきます。

免疫力は運動で高められる?適切な運動量とは?

免疫とは、細菌やウイルスなどが身体に侵入してきたときに、外敵と戦い退治して、身体を守る働きのことを言います。※1
個人差はありますが、人間であれば誰もが持っています。
免疫力が高まれば風邪や病気にかかりにくくなります。

免疫の働きとは

  • 感染の予防…ウイルスや病原菌からの感染を防ぐ。※1
  • 抗体を産生する…ウイルスに対抗する抗体を作る。※1
  • 異物などを正確に識別…異物を判断して癌細胞やウイルス・病原菌など・本来と違う細胞を区別する。※1
  • 健康の維持…疲労回復、病気や傷などを回復して、ストレスに強い身体を作る。
    身体の不調の予防や改善をする。※1
  • 老化や病気の予防…新陳代謝を活発にする。

機能低下や細胞組織の老化などによる病気の予防。※1
肌荒れ、ニキビなどを防ぐ美容効果もあると言われています。※1
免疫は主に血液が担っています。
その役割を果たしているのは血液中の「白血球」。
白血球は免疫細胞とも呼ばれています。※1
白血球は顆粒球約60%・リンパ球約35%・マクロファージ約5%と、3種の免疫細胞が存在しています。※1
免疫はこれらの3つの免疫細胞が、バランスを保ち正常な働きをすることで成り立っています。

免疫力には適度な運動が必要なわけ

白血球の数や働きは、自律神経の影響を受けているといわれています。※1※2
自律神経は、交感神経と副交感神経と2つの神経からなります。
身体が緊張状態や興奮状態にある時には交感神経が優位に、睡眠時やリラックスしている時は副交感神経が優位になっています。※2
交換神経が優位に働いているときは顆粒球を、副交感神経が優位に働いているときはリンパ球の比率が増えます。※2
自律神経は、免疫細胞である顆粒球かリンパ球、どちらを働かせるべきかを決めています。※2
免疫細胞をバランスよく働かせるには、自律神経を整えることが大切。
自律神経のバランスを整えることは、免疫力を高めることにつながります。※2
免疫細胞がどちらかに偏りすぎないためには、適度な運動が必要なのです。
健康づくりのための身体活動基準によると、適度な運動とは下記のように推奨されています。

 

【身体活動量】
日常生活での労働・家事・通勤・通学などのことです。
65歳以上:毎日40分何かしらの身体活動をする(強度は問わない)※3
18〜64歳:毎日60分以上、歩行もしくは、それと同等以上の身体活動をする※3

 

【運動量】
運動とは、スポーツなど体力の維持と向上を目的とした身体的活動を指します。
18〜64歳:毎週60分、息が上がり、汗を掻く程度の運動をする※3

運動をすると、体温が上がります。

 

「平熱が低い」は何度から?体温を上げる生活習慣とは

で紹介されているように、運動することで低体温の改善にもつながります。

※1「最新版 気になる免疫力がみるみる高まる大百科」/編者:主婦の友社/株式会社主婦の友社/2013年10月発行
※2「今すぐできる!免疫力を上げる31のルール」/監修:安保徹/学研プラス/2015年1月発行
※3「健康づくりのための身体活動基準」/厚生労働省e-ヘルスネット/2020年4月15日現在
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-01-001.html

簡単にできる室内ストレッチでもOK!高齢者でも出来るポイントとは?

疫力を低下させる原因の1つとして、姿勢が悪いことが上げられます。※2※4
自律神経と免疫、血液や体液循環は深く関係しているので、自律神経のバランスの乱れは免疫力の低下を招く可能性があります。※2※4
背骨の曲りやコリは、血液やリンパの流れが悪くなってしまいます。
背中の筋肉や歪みを整える体操をすると、循環を良くすることができます。※2※4
室内ででき、身体への負荷が少なく高齢者の方でもできる手軽なストレッチをご紹介しましょう。

1.椅子に座ったまま、背もたれに手をかけ背骨を軸にして、上半身を10〜15回す。※4

2.片腕を前に出し、もう片腕は肘を曲げ後ろに10〜15回引く。※4
交互に腕を前に出したり、引いたりする際は頭を動かさないようにして、肩だけを回転させるようにすると背筋が伸びます。※4

3.肩から上の力を抜いて、首を左右前後に倒す。
両足を肩幅に開き、全身の力を抜いて立ち、腰をゆっくり前後左右に揺らす。※4

4.両足を肩幅より少し広げ、つま先を外側に向けて、膝を軽く曲げる。
右足に体重をかけながら、右手で右足の太ももを撫で下ろすように身体を曲げる。
左のわき腹から腰にかけて、伸びるのを意識する。
反対側も同じように行い、左右を20〜30回、繰り返して行う。※4

5.両足を肩幅に開いて立ち、両腕を頭の上に上げ、横向きの8を描くように身体を動かす。※4

6.膝を軽く曲げて、手のひらを内側に向けて両腕を前後に振る。
後ろに振る時は力を入れて、前に振る時反動を使う。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加えて、全身運動や上半身の筋肉を使った運動を加えると良いでしょう。※4

7.床に座り、右足の上に左足を重ねて組む。
背筋を伸ばし、両手は頭の後ろに組み、肘は後ろに開くようにする。
胸や肋骨を開くように鼻から息を深く吸い、身体をひねり、口から息を吐きながら、ゆっくり身体を正面に戻す。
足を組み変えて、反対も同じように行う。
足首捻りはタイ式ヨガの動きを取り入れたもので、股関節から足全体に刺激を与えることができるので足の血流を改善させ、内臓機能を高めることに繋がっていきます。※4

8.屈伸運動は上半身を動かさないように膝を曲げ伸ばしする。
股割り体操は両足を肩幅より広めに開き、つま先は外側に向けゆっくりと屈伸する。
相撲の四股踏みは下半身の強化に効果的です。
身体の中で最も大きな筋肉の大腿四頭筋を鍛えると、効果的に筋肉量アップします。※4

※2「今すぐできる!免疫力を上げる31のルール」/監修:安保徹/株式会社学研パブリッシング/2015年1月発行
※4「免疫力を高めて病気を防ぎ治す知恵とコツ」/編者:主婦の友社/株式会社主婦の友社/2005年11発行

身体を動かすなら、ウォーキングや筋トレも

ストレスを受けて自律神経のバランスが崩れると、体温が下がってしまいます。※2
しかし運動をして筋肉を使うことで、熱が発生し体温が上がり免疫力が高まります。※2
ですから、筋肉の量が多ければ多いほど発生する熱は増えるということです。※2
体温を上げるポイントになるのが骨格筋。
一般的に筋肉というと、この骨格筋のことを指しています。※2
骨と連動して身体を動かす筋肉で、身体を支え、自分の意思で動かせることから随意筋とも呼ばれます。※2
運動不足で衰えやすく、どんどん減ってしまった骨格筋の量を増やすために鍛えることが大切です。
骨格筋の量を増やすには、ウォーキングだけでなくジョギング、水泳など酸素をたくさん取り入れる有酸素運動が適しています。※2
運動が身体に良いからと疲労が溜まるほどの、激しい運動を行わないように注意が必要です。
なぜなら、激しい運動では自律神経のバランスが崩れてしまうため。
交感神経が優位になってしまい、自律神経が乱れる原因となります。
適度な運動として取り入れやすいのはウォーキングかスクワットが簡単で良いでしょう。

ウォーキングのやり方

運動不足の方や高齢者は準備運動として、まずは身体をほぐす体操をしましょう。
ラジオ体操がオススメです。
無理をするとストレスの原因にもなってしまうので、ウォーキングは自分が心地よく感じる速さで歩きましょう。※2
また、姿勢は猫背にならないように、肩の力を抜いて、目線は景色を楽しみながら下を向かずに真っ直ぐ遠くを見つめるようにしましょう。※2

スクワットの効果とやり方

スクワットは歩くときに使われる大腿四頭筋や、腸を収縮させて内容物を押し出す腸の筋肉、尿もれを防ぐ骨盤底筋などの色々な筋肉にアプローチすることができます。※2※5
下半身の筋肉が衰えてしまうと、歩くと疲れるというだけではなく全身に影響が及びます。※2
下半身は重力の関係で約70%の血液が集まっており、下半身の筋肉には血液を心臓に戻すポンプ機能が備わっています。※2
下半身の筋肉の維持や、増強は血流を良くして、全身に酸素や栄養、免疫細胞がスムーズに届けることができ、体温を維持してくれるのです。※2

 

【スクワットのやり方】
1.両足を肩幅に開き、手を頭の後ろで組む。※5
2.背筋を伸ばし、胸を開いて息を吐きながら、膝が90°になるまでゆっくりと4秒かけて腰を下ろしていく。※5
3.息を吸いながら、膝を伸ばして4秒かけてゆっくり元の姿勢に戻る。※5

身体の負担にならないよう食前に行うことをおすすめします。※5
太ももに意識をして行い、お尻から頭を床と垂直にして、腰は曲げないように、そして痛みがある場合は無理せずに中断しましょう。※5

※2「今すぐできる!免疫力を上げる31のルール」/監修:安保徹/学研プラス/2015年1月発行
※5「死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい」/著者:小林弘幸/株式会社幻冬社/2017年10月発行

免疫力が高まるツボ「霊道」「極泉」

ツボ押しは、古代中国で生み出され研究されてきた療法です。※6
WHO(世界保健機関)の定義によると、ツボは身体に361個あるとされています。※7
ツボのルーツである東洋医学では「経絡」という気の流れる線が、身体中にあると考えられています。※6
この気のエネルギーはストレスなどで流れが滞ると、不調や病気の元になると言われています。※6
骨と筋肉で構成されている人間の身体には、筋肉と筋肉の筋交い部分に神経が交差している場所があります。
これをツボとして捉えています。※6
ツボ療法は、ツボへの刺激で気の流れを変えて、様々な不調を改善し自然治癒を取り戻す役割があると言われ、筋肉のひずみが出る場所だと言われています。※6
リンパが流れているリンパ管は、血管と同様に全身に張り巡らされているものです。
余計な水分や、疲労物質などを運び、身体の外に排出します。
また、リンパはウイルスなどの異物から身体を守る抗体を作り、免疫力を高めて、身体を病気から守っています。※6
つまり、リンパには。身体の中の浄化と免疫の2つの役割があると言えます。
免疫の機能が低下すると、疲れやすくなったり、感染症にかかりやすくなったり、アレルギーが引き起こされたりするなどの不調が現れます。※6
時間がないときはツボ押しではなく、さするだけでも筋肉のひずみやリンパの流れは解消されます。※6
首筋や脇の下、足の付け根にはリンパ節が集中しています。
すきま時間に手を当ててさすり、リンパのケアをしてあげましょう。※6
ツボ押しができる方は、下記を参考にツボ押しを試してみてください。

ツボ押しのポイント

圧迫感を感じるような強い刺激はせず、優しく軽い力でリズミカルに行います。※6
間隔は、心拍よりも遅めが目安です。※6
1週間に2〜4回のペースで行います。
お風呂上がりの就寝前は交感神経に作用して興奮を抑え、リラックス効果を高めるので安眠を促してくれます。※6

 

・霊道(れいどう)※6
手首の付け根にある横ジワの小指の端から、指1.5本分肘寄りのところ。
1.手のひらから肩へ向かって、腕全体をゆっくりとさする。
2.手首から肘に向かって、腕を圧迫するように移動させる。
3.手のひらを上にして腕を曲げ、反対の手の親指を霊道にあて、押し上げるように押す※6

 

・極泉(きょくせん)※6
脇の中央。動脈の拍動が感じられるところ。
1.胸の鎖骨の下部分(デコルテ)をさする。
2.脇に指先を入れ、親指を胸の上に置く。手のひらに力を加えて、胸の筋肉を動かすように押す。
3.人差し指・中指・薬指を脇の極泉にあて、押し上げるように押す。※6

ツボ押しやマッサージは痛い方が効くと思っている人も多いかもしれませんが、間違いです。
痛みを感じるほど強く押すと次に受ける痛みに対して防御するため、身体が強張ってしまい、効果が得にくくなります。※6
ツボは、皮膚から5ミリ程度下という浅いところにあるため、強い力をかけなくても十分です。※6

※6「自分のからだと上手につきあうツボ&リンパマッサージ」/監修:山田光敏/成美堂出版/2010年3月発行
※7「WHO経穴部位国際標準化の経緯と今後」/形井秀一/篠原昭二/坂口俊二/浦山久嗣/河原保裕/香取俊光/小林健二/2020年4月15日現在
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/57/5/57_5_576/_pdf/-char/ja

運動にプラス!免疫力を上げるために摂りたい食事

全章までは運動やストレッチについてご紹介しましたが、やはり「身体は摂取する食事からできている!」と言っても過言ではないので、積極的に摂取したい栄養素についても紹介していきます。
酸味や苦味、辛味のある食べ物は胃腸の働きを活発にして、副交感神経が優位になって身体がリラックスでき体温を上げることができます。※2※4

  • 酸味のある食品:レモンや酢、梅干し
    酸味のある食品に含まれるクエン酸は、疲労回復効果があります。
    焼き魚にレモンを絞るのもいいでしょう。※2※4
  • 苦味のある食品:ゴーヤ、ピーマン
    のぼせをとって、夏バテを防いだり、イライラを鎮めたりする効果があります。
  • 辛味のある食品:わさびや、唐辛子
    カプサイシンには体温を上げる効果があります。※2※4

免疫細胞である白血球は、主にタンパク質や脂質やミネラルから作られています。※2※4
免疫細胞を調整したり、細胞を活性化する役割はビタミンですが、ビタミンが十分に働くにはタンパク質やミネラルの協力が必要になります。※2※4
主食を白米から玄米にすると、食物繊維やビタミンを効率よく摂ることができます。
精白米は胚芽やぬかを取り除いていますが、胚芽やぬかには糖質やタンパク質、ミネラル類や、ビタミン類を豊富に含んでいる部分です。※2※4
玄米では、胚芽やぬかも一緒に摂れるので、毎日でなくても取り入れるのがいいでしょう。
玄米だけでは食べにくい場合は、白米と混ぜたり雑穀米がオススメです。※2※4

※2「今すぐできる!免疫力を上げる31のルール」/監修:安保徹/学研プラス/2015年1月発行
※4「免疫力を高めて病気を防ぎ治す知恵とコツ」/編者:主婦の友社/株式会社主婦の友社/2013年11月発行

まとめ

現代では、運動不足が気になる方も多いでしょう。
しかしストレスになるほどの運動を行うのは、身体を強くするためには逆効果です。
自分のペースで活動量を増やして身体を整えることが大切です。
忙しい方や、運動不足でいきなり運動に取り組むのが難しい方は工夫して生活に取り入れてみてくださいね。

監修者
大島
看護師免許、メンタル心理カウンセラー
美容外科・皮膚科にて勤務し、美容医療に5年ほど携わる。
AGAクリニックの立ち上げで、師長就任。
自身の美容経験から、医療機器に劣らないほど肌質改善が感じられた、ハーブピーリングでプライベートサロンを始める。
現在は美容医療に関わるコンサルタントや、美容メディアの運用、化粧品開発などを担当している。
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