オリーブは美味しいだけじゃない!!隠された栄養素のヒミツ

公開日:2019.06.04

オリーブといえば地中海料理をイメージする人は多いのではないでしょうか。
地中海食とは、一つの食事メニューではなく、それを生み出した文化そのものを指します。
ずっと以前から、地中海沿岸諸国では健康に過ごす人たちが多いことから、食生活に秘密があるのではないかと言われてきました。
オリーブに含まれる栄養素のヒミツと、その効果とは何なのでしょうか。

聖書にも登場するオリーブ、紀元前から存在していた?

オリーブは太古の昔から、平和、純潔、強さを象徴し「聖なる木」として崇められてきました。
南フランスやスペイン、イタリア、ギリシャなどの地中海沿岸地域では、旧石器時代の地層から、オリーブの化石が発見されていることから、1万年くらい前には自生していたと考えられています。
スペインで発掘されたオリーブの化石は、放射線による年代測定法により、少なくとも紀元前6000年のものであることが分かっています。
紀元前4000年頃には、地中海東岸で栽培が始まったといわれています。
オリーブの栽培は、ギリシャ人やフェニキア人、ローマ人によって地中海沿岸全域へと広まり、ローマ帝国の繁栄とともに大きく発展していきました。※1

紀元前800年頃になると、オリーブの木は神話にも登場します。
ギリシャ神話に、女神アテナと海の神ポセイドンが、宗主権を争う話があります。
住民によりよい贈り物をした方が地を治めるとしたこの戦いで、ポセイドンは白馬と塩水の泉を湧き出させ、一方のアテナは小高い丘にオリーブの木を生じさせました。
住民たちはアテナの贈り物を選び、その名にちなんで都市の名をアテナイと名付けました。
また、紀元前556年以降4年ごとに開催されたパンアテナイア祭りでの運動競技会の勝者には、オリーブの枝で作った冠が贈られました。
競技会用のオリーブの木は神聖なものとされ、特別な法のもとで保護を受け、最高級の役人と最高法廷アレオパゴス会議が管理してオリーブを採取、この聖なる木を切ったり傷つけたりすることは、もちろん厳しく禁じられていました。※1

また、紀元前3500年頃(初期の古代ギリシャ)には、オリーブの野生種と考えられるものがクレタ島で栽培されていました。
クレタ島のオリーブは、オリーブオイルへ加工されて地中海全域で流通し、特にエジプトへと流れていたようです。
ラムセス2世統治下のエジプトには、2700ヘクタールものオリーブ園があり、生産されたオリーブオイルは神への供え物とされたという記録が残っています。※1
太陽神ラーに捧げられたオリーブオイルは神殿の灯明の油につかわれました。
歴代王の墓には「魂があの世に向かう旅のための豪華な準備品」であるフレスコ画が残っており、ここにもオリーブオイルの壺が描かれています。※1

その後、オリーブはローマ帝国の繁栄とともに、各地へ広まりました。
ローマ帝国は、紀元前1世紀の初めにはヨーロッパ最大のオリーブオイル生産国となり、北はガリアから西はスペインにいたるまで、さまざまな新種のオリーブを栽培していました。
しかし、ローマ帝国が衰退すると、オリーブの栽培も徐々に衰退していきます。
ローマ帝国の拡大期には温暖だった気候は、地球規模で寒冷化となったのです。
北方の国々では寒すぎてオリーブの木を育てることができず、民族が南下を始めると、ローマは次第にその地のオリーブ園に対する支配権を失っていきました。
イタリア半島は、温暖な気候と土地を求めて北方からやってくる民族の侵入により、戦争と破壊と飢えの時代が始まりました。
ほどなくして、ローマ人が手入れしてきたオリーブの畑は打ち捨てられ、森林となってしまったのです。※1

※1 ファブリーツィア・ランツィア著 伊藤 綺訳 2016年4月発行 食の図書館 オリーブの歴史 原書房

地中海沿岸ではオリーブが必需品

地中海沿岸で発展した文明において、オリーブの木とその実は大きな象徴的価値を持っており、灯火用の油や化粧品、食材といった基本的な用途を超えて、利用されてきました。
数千年にわたり、地中海沿岸地域でさまざまな文明を発展させてきたオリーブは、まさに「地中海そのものの際立った特徴」だといえるでしょう。
現在、この地域には「地中海食」という文化があります。
健康食として世界に受入れられた地中海食には、次のような定義があります。※2

  •  植物性食品(果物・野菜・パン・その他穀物製品)が豊富
  •  加工度を最小限に留めた季節折々の新鮮な食材
  •  典型的なデザートとしての新鮮な果物
  •  適量の乳製品
  •  赤身肉を少量だけ使用する
  •  適量のワインを食事と一緒に摂る など

2010年11月、イタリア、ギリシャ、スペイン、モロッコが、4カ国共同で申請し、地中海料理はユネスコの無形文化遺産に登録されました。
共同申請であることから、特定の国や地域の料理ではなく、穀類、魚類、オリーブオイルやワイン、穀物など地中海地方の特徴的な食事モデルが認定対象となり、加えて地中海の習慣や伝統に基づいたライフスタイルが良好な健康をもたらすことが、評価されたのです。

地中海の象徴ともいえるオリーブは国や地域によって違いがあり、その数は何百種類といわれています。
代表的なものを国別に見ていきましょう。※3

【スペイン】

<アルベキーナ種>
原産:カタルーニャ地方 
形状:黄金色の小粒な実
用途:テーブルオリーブとオリーブオイルの原料として利用される
特徴:バターのような風味とぴりっとした辛みをもつ

<エンペルトレ種>
原産:アラゴン
形状:黒い中粒な実
用途:テーブルオリーブの他、良質のオリーブオイルの原料にもなる
特徴:熟した赤リンゴや新鮮な果実のような香りをもつ

【フランス】

<アグランド種>
原産:エクサンプロヴァンス
特徴:かすかな苦味で、アーモンドとヘーゼルナッツの香りを持つ

【イタリア】

<ビアンカ種・ボッサーナ種・トンダ種>
原産:サルデーニャ
特徴:ほのかな苦味とたんぽぽのような香りをもち、緑色のオリーブオイルになる

<カロレア種・コラティーナ種・オリアローラ種>
原産:カンパニア地方
形状:黄金色の実
特徴:濃厚でフルーティー

【ギリシャ】

<カラマタ種>
形状:黒い大粒な実
特徴:なめらかで濃厚な味わいのテーブルオリーブ用品種

オリーブにはたくさんの種類があり、個々によって用途や風味、食感などそれぞれ違いがありますので、自分にあったオリーブを探してみるのも、楽しいかもしれません。※1

※2 日本人の長寿を支える「健康な食事」-健康な食事の観点から、地中海食を題材に日本人の食事を考える- 東京大学大学院教授 佐々木敏/2018年12月閲覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000003537s-att/2r985200000353cp_1.pdf
※3 ユネスコ無形文化遺産に登録された和食文化とその保護と継承/2018年12月閲覧
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/4/48_320/_pdf
※1 ファブリーツィア・ランツィア著 伊藤 綺訳 2016年4月発行 食の図書館 オリーブの歴史 原書房

オリーブオイルの豆知識アレコレ

オリーブオイルにもたくさんの種類がありますが、これは国際オリーブ理事会(以下、ICO)の定義をもとに分類されています。
ICOとはオリーブオイルと、オリーブを塩漬けやオイル漬けにしているテーブルオリーブの分野で世界唯一の政府間組織です。
加盟する生産国で世界のオリーブの生産量の98%を占めているので、ICOの規定分類は世界基準といってもいいでしょう。

オリーブオイルの中でも「エクストラヴァージンオリーブオイル」は、溶剤などで抽出する科学的な手段ではなく、機械などの物理的手段でオリーブの果実から得られたヴァージンオリーブオイルの中でも、最も厳しい条件をクリアしたものとされています。
これは「化学分析」と、人間の感覚による分析である「官能検査」によって行われます。
化学分析では、酸度(遊離脂肪酸の割合で数値が低いほど新鮮)、過酸化物価、紫外線の吸収性など、細かな検査項目が数多くあり、その数値により分類されます。
官能検査では、オリーブオイルの欠陥の有無と、ポジティブな要素を嗅覚と味覚で客観的に判定します。
この官能検査を行う事ができるのがICOやEU加盟国の政府認定資格者である「鑑定士(テイスター)」です。※4

では、次にオリーブの実がオリーブオイルになるまでをご紹介します。

  1. 収穫後、実から枝葉を取り除く
  2. 洗浄する
  3. 実を粉砕する
  4. 粉砕したペースト状の実を練り込む
  5. 遠心分離器にかけペーストをオイルと搾りかす、水に分ける
  6. オイルに含まれる澱を取り除く
  7. 一定の温度に保った貯蔵室のタンクにオイルを入れて保存する
  8. 遮光瓶などの容器に充填する

搾油の工程で常に重要なのは、酸化を防ぐことと温度の管理です。
品質の高いオイルを目指す場合、粉砕の過程で酸素と触れると酸化しやすいため、ハンマー式やディスク式などの粉砕機を用いることもあります。
練り込みでは、酵素の働きによって香りが形成されるため、酵素が活性化する温度帯や練り込み時間を管理します。
保存時には、タンクに窒素を充填し、13~17℃に保った清潔な貯蔵室で保管します。
オリーブの実のコンディションを注意深く見守り、コンピューターによる完全管理が可能な搾油工程でも、温度帯や練り込み時間の調節をし、生産者の感覚で機械をコントールすることで、より良いオリーブオイルを作ることができているのです。

続いて、世界と日本のオリーブオイル事情についてみていきましょう。
オリーブの生産量はスペインがトップですが、輸出量に関してはイタリアとスペインがトップ。輸入量では、アメリカがトップです。
現在では日本でも健康志向が高まり、健康食品として注目されるようになったオリーブは需要が高まるなど、世界の流通事情は、今なお変化を遂げています。※4

※4 長友 姫世著 2014年10月発行 オリーブオイル・ガイドブック 新潮社

オリーブが持つ栄養素とは

オリーブオイルは太古の昔から、食する以外でも「人々の生活に寄り添ってきた」といえます。
例えば、外用として各種の塗り薬、香油の材料としてそのまま皮膚のマッサージに利用されてきました。
また、経口だけにとどまらず、鼻腔や外耳、目や生殖器などへの局所にも用いられていました。
記録に残る最も古い医薬としての処方は、パピルス文書のもので、顔のシワにオリーブオイルの塗布を勧めていました。※5

オリーブオイルは、他の油とは、明らかに性質の違う特性をもっています。
オリーブオイルには各種の脂肪酸が含まれていますが、悪玉として知られる飽和脂肪酸は、わずかしか含まれていません。
反対に、リノール酸、リノレン酸などの良い脂肪酸が、多く含まれています。
これらは必須脂肪酸と呼ばれ、体内で生成できないため、食事などで補う必要があります。
オリーブオイルには必須脂肪酸が含まれ、その含有率は人の母乳に匹敵します。
これらが必須脂肪酸といわれる理由は、人の体内で多くの化合物を合成するためです。
合成された物質は、各種の調節機能をもち、健康維持に必要とされます。
また、オリーブオイルは体の中で大切な働きをする微量成分にも富んでいます。
オリーブオイルの医薬特性は、数多く含まれる微量成分にあると考えられています。
実際、オリーブに含まれる成分には、次のようなものがあります。※5、6
・ フラボノイド配糖体(ルチン、ヘスペリジンなど)
・ フラボノイド(ルテオリンなど)
・ セコイリドイド配糖体0.3%(オレユーロペンなど)
・ ビタミンE  ※6

フラボノイドとは、ポリフェノールの一種で、5,000種類以上あるといわれています。
ポリフェノールの多くは水に溶けやすいため、体内で吸収されやすく、即効性がありますが、持続性はありません。
毎食、こまめに摂取をすることで、ポリフェノールの効果が続くのです。※7

※5 ベルナール・ジャコト著 小林 淳夫訳 1994年12月発行 オリーヴの本―地中海からの美と健康の贈り物― 河出書房新社
※6 林 真一郎編 2016年10月初版発行 メディカルハーブの辞典 東京堂出版
※7 中村 丁次監修 2015年7月発行 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版

オリーブが私たちの体に与えてくれるもの

前述の通り、はるか昔からオリーブオイルが存在したことは分かっていますが、中世から19世紀初頭まで、オリーブオイルの生産と消費についての情報はほとんどありません。
分っていることは、オリーブオイルは身体の衛生のためや宗教儀礼、家庭用として日常的に利用されていたということです。
古代において、皮膚のかゆみや乾燥を防ぐ目的で、オリーブオイルを身体に塗ってよくこする習慣はすでにありました。
また、紀元前4世紀、古代における最も偉大な医師の一人ヒポクラテスは、風呂に入ることができない場合にオリーブオイルで身体をこするとよいと考えました。
さらに、西暦1世紀に、ギリシャ人医師であり植物学者のディオスコリデスがまとめた論文では、オリーブオイルについて
●みどりのオリーブから搾った油は、完全無欠で健康にとって非常に有用である
●最上のものは新鮮で香りがよく、酸味が全くなく、軟膏をつくるのに適している
と記されています。※5

オリーブオイルの注目すべき成分はポリフェノールとオレイン酸です。
オレイン酸は一価不飽和脂肪酸に分類される液体の油脂分で、加熱料理でも酸化に強く、健康によい油として知られています。
オリーブオイルの脂肪酸組成の60~80%が、この一価不飽和脂肪酸です。
オリーブオイルはオリーブの実から取れたものですが、サプリメントとして使用されるのは、オリーブリーフと呼ばれるオリーブの葉の部分です。
このオリーブリーフには、体の「サビ」をキレイにする成分であるテルペン類やフラボノイド類が含まれており、元気な身体を作る成分として注目されています。※5、8
中でもオリーブリーフにしか含まれていない特有の成分がテルペン類のオレユーロペンです。
オレユーロペンは、オリーブの木を害虫などから守る役割を果たしています。
※5、9

※8 Consumption of olive oil, butter, and vegetable oils and coronary heart disease risk factors. The Research Group ATS-RF2 of the Italian National Research Council. Trevisan M et al, Respirology.JAMA. 1990 Apr;263(13):1768/2018年12月閲覧
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2296124?dopt=Abstract
※9 分子栄養学実践講座 歯周病が全身にもたらす影響/2018年12月閲覧
https://orthomolecularmedicine.jp/oral/periodontaldisease
※5 ベルナール・ジャコト著 小林 淳夫訳 1994年12月発行 オリーヴの本―地中海からの美と健康の贈り物― 河出書房新社

まとめ

栄養素は摂りすぎても、不足しても健康への被害がでてしまいます。
まずは自分の食生活を見直してみましょう。
イタリア料理や地中海料理はもちろん、旬のものや、産地にこだわった食材を彩りよく器に盛るなど、食に工夫を凝らすのもいいですね。

ライター
岡部
看護師
埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務
2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。
一般向けおよび医療従事者向け書籍
○執筆・編集協力
・看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)
・看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)  他
公開日:2019.06.04
上へ