不規則な生活で偏りがちな栄養素”ビタミン”で健康に!
健康は、毎日の食事がつくるものといっても過言ではありません。
特に必須栄養素であるビタミン類は、体内で必要量を作れないため、食べ物から摂取する必要があります。
しかし、忙しい現代人は不規則な生活に陥りやすく、栄養バランスにまで気が回らないのが現状です。
上手にビタミンを取り入れて、健康な体づくりに役立てましょう。
目次
- 体の中でのビタミンの役割は?
- ビタミンは体内でどのような働きをする?
- 健康のために…体に必要なビタミンの種類と特徴は?
- 水溶性ビタミンについて
- 脂溶性ビタミンについて
- 体に必要なビタミン13種類とは?含まれている食材は?
- 野菜だけでは足りない?ビタミンを食事だけで摂取するために必要な食品の量は?
- ビタミンはバランスよく摂取することが大切
- 調理方法によっては壊れてしまう栄養素もある
- 1日分の摂取量を食事で摂ることは大変
- まとめ
体の中でのビタミンの役割は?
私たちが普段口にしている食べ物には、さまざまな栄養素が含まれています。
そのうち、人間の生命維持に欠かせないのが、三大栄養素と呼ばれる「たんぱく質」「炭水化物」「脂肪」です。
ビタミンには、この三大栄養素の代謝を助け、体の調子を整える役割があります。
つまり、私たちにとってビタミンは、健康を維持する上でなくてはならない存在なのです。 ※1
ビタミンは体内でどのような働きをする?
人体を自動車に例えるなら、筋肉や骨、歯、血液などをつくるたんぱく質が車体、筋肉を動かすためのエネルギー源となる炭水化物と脂肪がガソリンです。
しかし、それだけでは車は動きません。
それぞれの栄養素の働きをスムーズにする、潤滑油のような働きをするのがビタミンの役割です。
三大栄養素の代謝には酵素が必要ですが、ビタミンの多くは酵素をサポートする「補酵素」として作用します。 ※1
※1 大塚製薬 栄養『栄養素の役割と摂取状況』/2019年1月24現在
https://www.otsuka.co.jp/nutraceutical/about/nutrition/functions/#tab03
健康のために…体に必要なビタミンの種類と特徴は?
ビタミンは大きく、水に溶ける「水溶性ビタミン」と、油脂に溶ける「脂溶性ビタミン」の2種類に分けることができます。
水溶性ビタミンについて
水に溶ける性質があり、血液中に溶け込んで酵素の働きを助け、代謝を促します。
大量に摂取しても尿と一緒に体外へ排出されるため、過剰摂取によるトラブルはほとんどありません。
ただし、体内に貯めておけない分、少量をこまめに補給する必要があります。
水溶性ビタミンに該当するのは、ビタミンB1、B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンCの9種類です。 ※2
脂溶性ビタミンについて
油脂に溶けやすいビタミンです。
水溶性ビタミンのように尿とともに排出されることはなく、主に脂肪組織や肝臓に貯蔵されます。
体内で毎日少しずつ消費されるため、すぐに欠乏症に陥る心配はないでしょう。
その反面、体の中に蓄積されやすいことから、過剰摂取には注意が必要です。
脂溶性ビタミンには、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあります。 ※2
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット『ビタミン』/2019年1月24現在
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
体に必要なビタミン13種類とは?含まれている食材は?
現在、正式に認められているビタミンは全部で13種類あります。
それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。
ビタミンA:脂溶性ビタミンのひとつで、黄色や赤色の緑黄色野菜に多く含まれる「βカロテン」と動物性食品に含まれる「レチノール」の2種類があります。
ただ、私たち日本人は、にんじんなどの緑黄色野菜から取り入れる割合が多いようです。
熱に強く、加工することで吸収率が高まります。皮膚や粘膜の働きを正常に保つ役割があり、目の健康にも関わっている栄養素です。
ビタミンAが不足すると、夜間に目が見えなくなる「夜盲症」を発症することで知られています。
多く含まれる食材:レバー、うなぎ、バター、マーガリン、チーズ、卵、緑黄色野菜など ※3、※5
ビタミンB1:糖の代謝を促してエネルギーを産出し、神経や筋肉へ補給する役割があります。
糖質を栄養源とする脳神経系の機能を正常に保つためにも重要です。
ビタミンB1が不足すると、糖質をエネルギーに変えることができず、疲れやすくなったり、食欲がなくなったりします。
かつて国民病といわれていた脚気(かっけ)は、ビタミンB1欠乏によって起こる病気です。
多く含まれる食材:穀類のヌカ部分、豚肉、レバー、豆類など ※3、※4
ビタミンB2:ビタミンAとともに、皮膚や粘膜の健康維持に役立つ栄養素です。
また、摂取した糖質や脂質、たんぱく質をエネルギーに変える「エネルギー代謝のビタミン」としても知られています。
水溶性で黄色い色素をしていることから、ビタミンB2を強化したドリンクや栄養補助食品を摂ると、尿が濃い黄色になることがあります。
口内炎ができやすくなる、肌が荒れるなどの症状が現れたら、ビタミンB2不足を疑ったほうがいいでしょう。
多く含まれる食材: レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品など ※3、※4
ビタミンB6:
食品に含まれるたんぱく質のエネルギー代謝に欠かせないビタミンです。
たんぱく質を多く摂取する人ほど必要とする量が増えます。
また、皮膚や粘膜の健康維持をサポートする役割もあります。
腸内細菌からも合成できるので、欠乏する可能性は少ないと考えられますが、抗生物質を長期間にわたって服用すると不足しやすくなり、皮膚炎や口内炎などを発症する場合があります。
多く含まれる食材: かつお、まぐろ、レバー、バナナなど ※3、※4
ビタミンB12:水溶性ビタミンのひとつである葉酸と協力して、血液中のヘモグロビン合成を助ける働きがあります。
立ちくらみなどの貧血症状は、ビタミンB12と葉酸不足で起こると考えられます。
脳を活性化する作用もあり、神経の働きには欠かせません。
ビタミンB12は動物性食品に多く含まれており、植物性の食品にはほとんど含まれていないのが特徴です。
そのため、極端な偏食の人やベジタリアンで肉や魚を食べない人の場合、不足する可能性があります。
多く含まれる食材: 魚介類、かきなどの貝類、レバー、肉類など ※3、※4
ビタミンⅭ:美容やアンチエイジング効果に優れていることで知られるビタミンです。
肌のハリや弾力の元となる、コラーゲンの生成に役立ちます。
また、ストレスに対する抵抗力や、ウイルスから身を守る免疫力を高める作用があり、風邪やインフルエンザの予防にも有効です。
さらには、動脈硬化や心疾患などの原因となる活性酸素をすばやく取り除き、体内の酸化を防ぐ働きもあります。
ビタミンCは健康の維持・増進に重要なビタミンといわれています。
今健康だからといって、摂らなくていいというものではありません。
現在、健康な人がより健康な状態をつくるために積極的に摂りたいものです。
特に、タバコを吸う人やストレスが多い人ほどビタミンCを消費しやすいため、積極的な摂取を心がけましょう。
多く含まれる食材:かんきつ類やイチゴなどの果物、野菜、いも類など ※3、※4
ビタミンⅮ:食品から摂る以外に、日光に浴びることでも体内で合成できるビタミンです。
カルシウムの吸収をサポートして、丈夫な骨を作ります。
ビタミンD不足すると、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や骨軟化症を引き起こすリスクが高くなるといわれています。
反対に、過剰摂取には注意が必要です。血液中のカルシウム濃度が高くなる「高カルシウム血症」を患い、骨がもろくなったり、腎機能が低下したりする恐れがあります。
多く含まれる食材:塩さけ、しらす干し、卵、キノコ類など ※3、※5
ビタミンE:ビタミンEは自然界に多く存在するビタミンで、4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種類の抗酸化物質で構成されています。
「若返りのビタミン」と呼ばれるほど抗酸化作用が強く、生活習慣病や老化を防ぐ働きがあります。
脂溶性ビタミンのひとつですが、食品から摂取する分には過剰症に陥るリスクは低く、積極的に摂りたい栄養素です。
多く含まれる食材: ナッツ類、植物油、うなぎ、たらこ、西洋かぼちゃ、アボカドなど※3、※5
ビタミンK:さまざまな緑黄色野菜に含まれているほか、腸内細菌によっても作られるビタミンです。
ビタミンKには止血作用があり、足りなくなると血が止まらなくなります。
また、骨の形成にも一役買っており、骨粗鬆症の治療薬としても活用されています。
通常の食生活では欠乏症や過剰症に陥る可能性はほとんどありません。
ただし、長期間にわたって抗生剤の服用を続けていると、腸内細菌が死滅してビタミンK不足になる場合があります。
多く含まれる食材: 納豆、小松菜、ほうれん草など ※3、※5
ナイアシン:ビタミンB群の1種で、ニコチン酸とニコチンアミドの総称で、皮膚や粘膜の健康維持をサポートする栄養素です。
たんぱく質、脂質、糖質の三大栄養素の代謝には欠かせません。
ナイアシン不足が深刻になると、皮膚炎や痴ほう、下痢などを引き起こす「ペラグラ」を発症するリスクが高くなります。
一方、通常の食生活から過剰症になるケースはほとんどないでしょう。
多く含まれる食材: レバー、魚、肉類など ※3、※4
パントテン酸:ビタミンB群に含まれる栄養素です。
糖質や脂質、たんぱく質が燃焼する時に欠かせない補酵素の役割を果たします。
また、ホルモンの合成や、ウイルスや細菌を退治する抗体の産出にも必要です。
皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きがあり、口内炎や口角炎の予防にも役立ちます。
多く含まれる食材: レバー、納豆、さけ、いわし、肉類、卵など ※3、※4
ビオチン:ビタミンB群に属しており、ビタミンB7とも呼ばれています。
糖質のエネルギー代謝や脂肪酸の合成、アミノ酸代謝に関わる補酵素で、皮膚や爪、毛髪の健康維持をサポートする栄養素です。
また、筋肉痛を緩和する働きもあります。
ビオチンが不足してしまうと、皮膚炎や脱毛、食欲不振、うつ症状などを招く恐れがあります。
多く含まれる食材: レバー、卵、あさり、ししゃも、納豆、ナッツ類など ※4、※6
葉酸:ビタミンB群のひとつです。
その名のとおり、葉物野菜に多く含まれています。
DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の合成を促して、細胞の生産や再生を助ける重要な役割を担っています。
赤ちゃんの正常な発育のためにも不可欠なビタミンです。
妊娠初期に適量の葉酸を摂ることで、胎児の神経管閉鎖障害リスクを低減できることがわかっています。
多く含まれる食材:レバー、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなど ※3、※4
※3 グリコ 栄養成分ナビ『栄養成分百科』/2019年1月24現在
https://www.glico.co.jp/navi/dic/index.html
※4 厚生労働省『ビタミン』/2019年1月24現在
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
※5 厚生労働省『脂溶性ビタミン』/2019年1月24現在
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
※6 東北大学病院 『ビオチンとは』/2019年1月24現在
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/pc/img/tyuuou/hiroba04.pdf
野菜だけでは足りない?ビタミンを食事だけで摂取するために必要な食品の量は?
ビタミンは体内では合成されないか、作られても微量であるため、食べ物などから摂取する必要があります。
厚生労働省では十分なビタミンやミネラル、食物繊維を摂取する基準として、1日350g以上の野菜を食べることを推奨しています。
そのうち、緑黄色野菜は120g、淡色野菜やキノコ、海藻を合わせて230gを目安にしてください。
単一の野菜では栄養が偏るので、いろいろな野菜を食べるのが望ましいでしょう。
しかし、野菜さえ食べていれば全てのビタミンを補えるわけではありません。
水溶性のビタミンB群や脂溶性のビタミンA、ビタミンDは、肉や魚、ナッツ類にも多く含まれています。
植物性食品と動物性食品をバランスよく取り入れることが大切です。 ※7
ビタミンはバランスよく摂取することが大切
全部で13種類あるビタミンは、それぞれ異なる働きがあります。
どれかひとつでも足りなくなると、疲れやすくなったり、肌がカサついたりと、体調不良に陥りがちです。
かといって、多く摂取すればするほど健康に良いわけではありません。
適量をバランスよく摂取することが重要です。
また、ビタミンは数種類を同時に取り入れることで、お互いの働きを補い合い、より高い効果を発揮するといわれています。
さまざまな食材を取り入れて、まんべんなく栄養素を確保しましょう。
調理方法によっては壊れてしまう栄養素もある
水溶性ビタミンは水に溶けやすく、熱にも弱いため、水洗いや加熱をするとビタミンが壊れることがわかっています。
そのまま生で食べたり、さっと茹でたりする調理法がおすすめです。
1日分の摂取量を食事で摂ることは大変
350g以上の野菜を摂取しようと思ったら、1食1皿以上、1日5皿以上の野菜料理を食べなければなりません。
これだけの量を食事だけで摂るのは、なかなか大変な上、ストレスにもなります。
栄養強化食品やサプリメントを上手に活用するのもひとつの手です。
※7厚生労働省 e-ヘルスネット『野菜、食べてますか?』/2019年1月24現在
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-015.html
まとめ
美容や健康に欠かせないビタミンは、一部を除いて体内でつくれないので、食事から取り入れる必要があります。
ただし、ビタミンを十分に摂ることは健康にとって重要ですが、ビタミンが健康の全てではありません。
バランスのとれた食生活を心がけ、必要な栄養素をまんべんなく摂取しましょう。
- 栗原 ユナ
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看護師、保健師、アロマリンパオイルテラピスト
大学病院の総合外科で、消化器・呼吸器・乳腺・血管専⾨病棟で 3年勤務。
過労にて⼼身ともに体調を崩すも⾃身の健康を守るため予防医学と美容に特化したクリニックに転職し、クリニックの広報の他、健康メディアのライターも務める。 美容健康セミナーなどのイベントも開催し、SNSでは予防医学・ 健康的なダイエット法・自⾝身の経験から看護師の働き⽅方について発信。
プロダンサーとしても、都内・海外で活動を行い、看護師の新たな働き方のモデルケースになるべくマルチに活動を行っている。